つまり試験管を用いた試験によって、3万3千倍もの乳酸菌が生き残るということが立証できたとしても、人間の体内でもチョコレートに包んだ乳酸菌が胃酸を通過し、生きたまま腸まで届く“可能性がある”としか言えないのです」(同)
2月14日に配信されたニュースサイト『ダイヤモンド・オンライン』の記事によれば、「乳酸菌ショコラ」の開発に携わった京都大学の小川順教授は「現在の科学技術では人間の腸内でどれだけの乳酸菌が生きているかは人間を解剖して検証する以外に定量的に測れない」と発言しているが、どうすれば証拠を提示することができるのだろうか。
「いえ、人間を解剖しなければわからないということはありません。腸へ生きた乳酸菌が届いたかどうかを調べる方法としては便を利用した方法があります。
まずは、普段の便内に含まれた生きた乳酸菌量と、チョコレートに包まずに乳酸菌を摂取した後の便内に含まれた生きた乳酸菌の数の増減値を出します。
次に、同じように普段の便内に含まれた生きた乳酸菌量と、チョコレートに包んだ乳酸菌を摂取した後の便内に含まれた生きた乳酸菌の増減値を出すのです。
この2つの数値を比較し、チョコレートで包んだ乳酸菌を摂取した便のほうが100倍以上、生きた乳酸菌が検出されれば、しっかりと腸まで生きたまま届いたという証明になります。
このように、乳酸菌の“生存比率”を医者と患者の協力があれば可能なのです。
ただこういった人での試験は莫大な費用がかかることが多いですし、安全性を確保する必要があるため、今回は行われなかったのかもしれません」(同)
“チョコに包むと100倍届く”という仮説に意義はある
「生きた乳酸菌が100倍とどく」と謳うには人体解剖まではいかずとも、費用と手間がかかる人での実験をする必要があるということか。
ただ、後藤氏はロッテが行った試験管実験の結果自体は注目に値すると続ける。
「このロッテの試験で注目すべきは、人工胃液という強酸にチョコレートに包んだ乳酸菌を2時間もつけ込んだにも関わらず、ほとんどの乳酸菌が死んでいなかったということ。実際にこの試験では3万3千倍という結果が出ていますし、もしこれが体内でも同じような結果となるならば、100倍どころではない数の生きた乳酸菌が腸へ届くことになります。
ですから、チョコレートで包むだけで乳酸菌がほとんど死なないという仮説を立てたというだけでも、とても意義があることだと思います。
ただロッテは、現在は『生きた乳酸菌が100倍とどく』というコピーは使用していませんから、やはりそう断言できる人での実験はしていなかったのではないかと思います。消費者を騙すつもりだったということはなく、よかれと思って勇み足の宣伝をしてしまったということではないでしょうか」(同)
消費者庁が“景品表示法違反”と判断した場合、違反対象期間における売上の3%分の課徴金がロッテ側に課される可能性があるという。今後の消費者庁の対応にも注目していきたい。
(文・取材=A4studio)