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しかし、トランプ氏の言動を見ると、目指す政策を提案し、批判されると感情的になって相手を脅したり攻撃している。当たり前だが、攻撃されたほうが良い気分であるはずはなく、冷静に本音の議論を進めることはできなくなってしまう。経済に関する基本的な理解の欠如もさることながら、稚拙な交渉スタンスを改めることができないと、徐々に政権運営は苦しくなるだろう。交渉をスムーズに進めるために大統領の暴走を諌めたり、保守派との意見の橋渡し、根回しができる側近もいないようだ。
今後、オバマケア代替法案と同じ過ちを繰り返すことはできない。ホワイトハウスと議会の意見がこじれたとき、誰がどのように調整能力を発揮するかがトランプ政権を評価する大きなポイントだ。
先行きの不透明感高まる経済運営
オバマケアの代替法案が共和党保守派に反対されたことを受けて、トランプ大統領は保守派への配慮を示し始めた。それが地球温暖化に関する規制の撤廃を定めた大統領令だ。これは、国内の石炭業界などのオールドエコノミーの再生を意図している。競争力を失った産業への支援はトランプ政権の公約通りではある。
この大統領令には問題が多い。当たり前だが、石炭よりも石油のほうが熱効率は良い。それが、石炭業界の縮小につながった。そして、シェールガス・オイル開発の進展により米国はサウジアラビアなどと並ぶ世界最大級の石油生産国だ。わざわざ効率の悪い資源の再生を進める財源があるのであれば、国内のシェールガスの採掘コストの低下など新しい技術開発に力を入れるべきだ。
そして、温暖化ガス排出削減につながる技術開発には時間もかかる。そうした取り組みを各国に先んじて進めることこそが、イノベーションの発揮、米国の地位向上につながるはずだ。石炭業界の保護に、経済合理性は見いだせない。温暖化対策への取り組みをやめることは、国際社会共通の課題に背を向けることにほかならない。保護主義に基づく輸出重視も然りだが、自国第一の発想だけで政策を進めていると、どこかで他の国の批判や報復を受ける恐れがある。それは米国の発言力を低下させ、国際社会のなかにおける地位を貶めるだろう。
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