中国が報復として「韓国旅行禁止令」を発動
これに対して中国外務省は4月26日、「地域の平和と安定を実現する上で妨げになる」と表明。米韓に抗議したことを明らかにした。中国は3月30日にも、国防部の報道官が次のように警告している。「THAAD配備が韓国を安全にすることはない」「中国軍は『THAAD配備反対』を言葉だけで終わらせない」。
中国は実際にこれまでもTHAAD配備計画に対して「実力」で牽制してきた。その標的にされているのが、受け入れ国の韓国だ。
16年7月に米韓がTHAAD配備に合意すると、中国ではその翌月から韓流スターがメディアから消え、韓国人に対する商用ビザ審査が厳格化された。同年10月には、中国「国家旅遊局」が国内旅行会社に訪韓観光客を2割減らすよう通達している。
だが、韓国側も配備計画を止めず、その翌月に懸案だったTHAADシステム用地選定を終了。今年2月末にその取得契約を終え、年内の配備完了に向けて大きく踏み出した。
これに対して中国はついに「韓国旅行禁止令」を発動。3月15日から、国家旅遊局がパッケージツアーをはじめとする韓国旅行商品の全面販売禁止に踏み切ったのだ。
中国依存の観光業界に打撃
日本でも「爆買い」中国人客の消費縮小が、各業界にインパクトを与えたのは記憶に新しい。だが韓国経済が被る影響はそれよりはるかに深刻だ。
16年に韓国を訪れた外国人旅行者1720万人のうち、中国人は47%に当たる806万人。日本は同じく2404万人中637万人、シェアは26.5%にとどまる。さらに中国人の韓国旅行はパッケージツアーが多い。全中国人旅行者に占めるパッケージツアーの比率は、日本向けは約30%に対して韓国向けは約45%だ。もちろん韓国旅行禁止令には個人旅行向けの商品も含まれる。
韓国旅行禁止令の結果、中国人旅行者は4月上旬までに前年同期55万人から19万人に急減。実に65.5%ものマイナスだ。韓国観光公社は、17年の中国人旅行者数が昨年の約半分まで落ち込むと試算。免税品販売及び観光関連の収入は、約8兆ウォン(約7800億円)の減少を見込んでいる。