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安倍政権、共謀罪強行採決の「隠された目的」…選挙対策で公明党の強い意向

構成=深笛義也/ライター
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共謀罪が社会に与える影響

 では、共謀罪が制定されることによって、社会にはどのような影響が出てくるのだろうか。

「一般市民が共謀罪によって監視の対象になるのかという問題があります。『組織的犯罪集団の構成メンバーという前提がないと、対象になりません。一般市民は対象になりません』という政府の説明に対して、『メンバーか否かの見極めはどうするのか、見極めるために一般市民も対象になってしまう』という指摘もあったわけです。国会審議を丁寧に見ていると、『組織的犯罪集団の構成メンバーでないと見極めができた段階で、その対象から外れます。あるいは、本人の意識がなく知らず知らずのうちにその構成メンバーになっていた場合は、それも対象になりません』ということを、政府は明確に言っているのです。

 国会でのそういったやり取りは、ほとんど世の中に知られていません。一般市民の監視という観点では、決着が付いているのです。反対派からよく言われていた『保安林区域でのキノコ狩りを計画したただけで、共謀罪で捕まる』『居酒屋で気に入らない上司を殴ってやろうと話しただけで、共謀罪で捕まる』という物言いについては、『そんなことはない』ということで、国会で決着が付いているわけです。

 イメージだけの批判ばかりが先行して、本来やっておくべき議論がなおざりにされています。この共謀罪だけでは、犯罪抑止につながりません。実際に、テロ行為を起こそうとして謀議をしているような状況を、どうやって把握するのか。今の法律ではそれを把握するということは、不可能に近いくらい難しいわけです。それを可能にするためには、いわゆる盗聴法といわれている通信傍受法の強化が行われることになりかねない。場合によっては市民の通信は全部傍受される可能性もある。

 あるいは、謀議している誰かが自ら捜査当局に密告すれば、その本人の罪が軽くなるというような、司法取引が制度化されるかもしれない。今の日本には司法取引はありません。司法取引は密告した人間の証言が尊重されるので、冤罪の温床になりかねない。これは明らかにいき過ぎです。本来であるならば、そういった方向に行かないような歯止めをかけていく議論をすべきだったと思います。

 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するために共謀罪が必要だ、と政府は説明していて、それに対して『TOC条約は、ヤクザやマフィアのマネーロンダリングなどに対するもので、テロとは関係ない』と反対派は言っています。しかし、テロ組織も麻薬の売買など非合法な手段を使って活動資金を得ているわけで、マネーロンダリングは密接に関係する。ISなどをみればわかるように、犯罪行為をした上で資金を得て、それを活動資金に充てているので、マネーロンダリングしているわけですよ。そのことに関してもほとんど議論されてなくて、政府のほうも反対派のほうも、説明が不十分だったと思います」

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