トランプ米大統領は崖っぷちに立たされているのか――。
トランプによって5月に解任されたジェームズ・コミーFBI前長官は8日、米上院情報特別委員会の公聴会に出席。ロシアとの深い関係が疑われていたフリン前大統領補佐官への捜査について「フリンは良いヤツだ。この件は放っておいてほしい」とトランプから2月に求められたと、自身のメモに基づいて証言、司法妨害があったことを示唆した。
在職中の大統領が辞任に追い込まれたニクソン大統領のウォーターゲート事件になぞらえられて、ロシアゲートと呼ばれているが、どのような背景でこの問題が起こり、今後どのようになっていくのだろうか。
元外務省情報局長で『戦後史の正体』(創元社)をはじめ数多くの著作のある評論家、孫崎享氏に話を聞いた。
「前回の米大統領選挙をずっと追いかけていましたが、ロシアの情報あるいはロシアの工作によってトランプが優位に立ったということや、逆にヒラリー・クリントンがマイナスの影響を受けたということはないです。ヒラリーにはずっと疑惑があったわけです。ひとつは、国務長官時代に私用のメールアドレスを公務に使っていたという疑惑。もうひとつは、クリントン財団が外国からお金をもらい見返りに便宜を払っていた、そして金融界からもお金をたくさんもらっていたという疑惑です」(孫崎氏、以下同)
疑惑は2015年に『Clinton Cash(クリントン・キャッシュ)』(ピーター・シヴァイツァー著/あえば直道監修/LUFTメディアコミュニケーション)という書籍で暴かれ、16年には映画化までされた。
「疑惑に対して、昨年8月と、大統領選の投票を目前にした10月に、コミーFBI長官が調査をすると示唆したことで、ヒラリーは非常に苦しくなった。8月のときには2~3%くらい支持率が動いたといわれている。10月のときは、もっと大きかったといわれています。なんらかの情報操作で大統領選挙に影響を与えたとしたら、捜査を検討するというFBI長官の発言だけなのですね。トランプ側がクリントンを攻撃するために有効な情報を持っていて、それがダメージを与えたということはありません。選挙期間中、トランプはロシアとコンタクトは取っていたかもしれない。だけど、ロシアの情報で米大統領選挙が影響されたという場面はありません。FBIによる今回の捜査というのは、どこか異常なところがあります」