6月28日に、尼崎にある四代目真鍋組本部で開催された任俠団体山口組の定例会。定例会終了後、そこではブロック会議が順次執り行われたのではないかといわれている。そうしたなか、業界関係者らの間にブロック一覧表が出回った。
その一覧表で明らかにされたのは、任俠団体山口組が「神戸ブロック」「東日本ブロック」「大阪北ブロック」「大阪南ブロック」の4つに区分けされていること。各ブロック長には、本部長補佐に名を連ねる4人が就任しており、すべてのブロックが2班に分かれて形成されている。
ブロック制度とは、要はガバナンス強化のための施策である。組織が大きくなればなるほど、中央集権で統治していくよりも、適切な規模に分割された組織(ブロック)に一定の権限を委任し、そこに置かれた各統治者が中央で決まった方針を実行することで、組織全体の運営が合理的かつ効果的にできるというもの。さらにブロック内を班分けすることによって、その機能がより効力を増すという狙いだ。
「この班分け制度は、任俠団体(山口組)が初めての試みではない。六代目(山口組)分裂以前にも各ブロックの中で実践されたことがある。だが途中、なんらかの理由でその制度は立ち消えとなっていった」
こう漏らすのは神戸山口組系幹部だが、著者の記憶でも、そういった制度が取り入れられていたのを覚えている。この時は、ブロック内の地域ごとにA班B班と班分けされ、班長は1年交代を目処にスタートした。ブロックごとに置かれていた若頭会の会計係も同様で、組ごとに1年間の持ち回り制で行われていた。しかし、この幹部が言うように、いつの間にか班分け制度は立ち消えになり、その効果のほどは判然としていないようだ。
またブロック一覧と同じく関係者の間に出回ったのが、任俠団体山口組の最新組織図である。そこには、新たに直参へと昇格を果たした2人の名前も記されている。健國同志会の鈴木賴一会長と二代目是木組の西村羊次組長だ。この組織図を見て、別の神戸山口組系列の関係者は苦々しげに語る。
「『神戸山口組を割って出た理由は、山健組(神戸山口組の中核団体)の跡目争い云々ではない』と任俠団体山口組は語っているが、今回も山健組傘下の名門『健國会』の名称を使った健國同志会なる組織を立ち上げ、直参にしているではないか。これ以前から、山健連合会や山健同志会と、『山健』を冠した組織がある。任俠団体山口組が、山健組に強いこだわりを持っているようにしか見えないだろう」
一方、六代目山口組系幹部はどういった反応を見せているのか。複数に聞いたが、「ブロック一覧にしても組織図にしても、まったく興味がない」といった声が大勢を占めていた。
任俠団体山口組としても、そういった新たな試みや組織について、冷ややかな声が上がるのは織り込み済みだったのではないだろうか。その上でブロック制度を導入させ、かねてから標榜している「脱社会的組織」を目指した運営方針を隅々まで浸透させるという姿勢を示したとみられる。
また捜査関係者によれば、6月28日の定例会では、新たに直参に昇格した健國同志会の鈴木会長は出席していたことが確認されたが、同じく新直参である二代目是木組の西村組長の姿は確認されなかったという。「現在、西村組長は収監中であり、そんななかでも直参昇格させる必要性があったのだろう」(捜査関係者)
ブロック制度も導入し、組織力を強化し続ける任俠団体山口組。こうした動きに対して神戸山口組、六代目山口組では、どのような対応を示していくのか。そして、警察当局の見解は……。
先行きを予測できない混沌状態が今もなお続いている。
(文=沖田臥竜/作家)
●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。