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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ!【第24夜】

沖縄の男はなぜ働かない!?「別れた妻にガソリン代を借りに…」

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沖縄の男はなぜ働かない!?「別れた妻にガソリン代を借りに…」の画像1サービスカット。(「Thinkstock」より)
ーー『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』(共にテレビ東京)『情熱大陸』(TBS)などの経済ドキュメンタリー番組を日夜ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で裏読みレビュー!

今回の番組:4月14日放送『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)

「沖縄の男は働かないし、ダメなのさ。絶対、結婚なんかしない」と沖縄の女性から聞いたことがある。あの暑さと独特の気候が働く意欲をなくしてしまうらしい。僕は数度行ったことがある程度だが、確かに飲食店に入っても一生懸命働く姿は女性の方が多い……ように見える。

 今回の『ザ・ノンフィクション』はこの言葉を立証するかのような、「あちゃー」と何度も声が出てしまう回だった。

  数年前に放送された『上京物語』を見た記憶がある。沖縄から東京の寿司屋に修行に出た仁君(22)が厳しい指導にもめげず、生活する姿を追っていた。今回はその特別版とも言える『母との再会編』だ。彼はいまだ一人前とは言えない。休日も余った酢飯を持って帰り、割り箸を具材の代わりにのり巻きの練習をする。そんな一生懸命な仁君が久々に沖縄に帰ることになった。

 仕事もせず、ダラダラを過ごす父を叱りに行ったのだ。

 求人そのものが少ない沖縄で仕事を見つけるのは大変なのかもしれないが、「なんくるないさOKINAWA」とプリントされたTシャツを着てゴロ寝して、スナックのママに対して「アタックしてもう4年か5年になるかな」なんて惚けているようじゃダメだ。壁に折り目のついたアイドルのポスターを貼っているのもダメさに拍車がかかる。仁君は怒りを隠さず「もし家賃が払えないから出てってくれ」と言い切る。そりゃそうだ。父が働かないことが理由で母親が家を出たのだから。

 しかし、その母から19年ぶりに連絡が来た。前回の放送を見たことをきっかけに「息子に会いたい」と。母子手帳にも名前が消されるほどに関係性が切れてしまっている母に対し、捨てられたと思っている息子は「話すことはないね」と語る。しかし父は「今会っておかないと一生後悔する」と伝える。その言葉が後押しになったのか、二人は車を走らせた。

 ここから番組は一気にロードムービーの雰囲気となる。

 空撮で撮られた海に、走る車。周囲の人を訪ね、家を探す。が、母はあっさりと見つかった。茶髪の長い髪が印象的で、息子のお下がりのような派手なシャツにジーンズ姿。母は番組を見たこと、今は息子がいること、好きな音楽、趣味、自炊、酒は飲むのか、といったことを聞く。仁君も答えはするがどこかよそよそしい感じ。父は少し離れて、そんな様子を見る。番組スタッフは気を利かせて夕日の沈む絶好のロケーションを狙っていたが、母と息子の時間はわずか30分程度しか保たなかった。

 しかし、この出会いをきっかけに、仁君は母とメールを交わすようになる。東京に送られてくる派手なシャツを「外では着れないな」と苦笑いする姿が微笑ましい。この出来事は仕事にも良い影響を与えることになった。仕事に対し積極的になり、例えば常連さんには煮付けを出すようにまでなった。上司も「以前と違って男らしくなった」と褒め、この調子ならあと半年か一年で厨房に立てると太鼓判を押す。気持ちひとつで人は変われるし、仕事にも良い影響が出るものなのだ。沖縄の母からは恋人を紹介されるまでになり、仁君は明らかに成長をしている。

 一方、父はこの再会をきっかけにダメ一直線。「本当に沖縄の男ったら!」と僕は声を出してしまうが、仁君は立派に働いている。この父が特別なのかもしれない。しかし、別れた妻にガソリン代を借りに行った、なんて誰が聞いても呆れてしまう。仁君は沖縄に帰った際に開かれた食事会にも父を誘うことはなかった。自分が母と再会したことで、父が彼女にも甘えるようになったことを後悔しているようだ。

 だが、そんな父も「自分も負けてられない。相手を捜さないと」とお気に入りのなんくるないさTシャツを着て「詫びながら手酌酒~」と例のスナックで熱唱するが、そういうことではないでしょう(苦笑)。遂に父はスナックのママに告白をする。

 散髪をして、正装して海岸で告白するが、当然玉砕。「ずっと友達でいいさ」とママは流すが、父は「その気になるまで待つ」と苦笑い。ここで『ザ・ノンフィクション』も終了の時間となった。

 全然ハッピーエンドじゃないが、仁君との回想シーンを交えて、貫地谷しほりのナレーションで「応援と夢」で締めた。光る砂浜に立つ親子の姿は美しいが、僕は誤摩化されないぞ。しかし、この強引さこそが日曜の昼には相応しい。さすがです、『ザ・ノンフィクション』。
(文=松江哲明/映画監督)

BusinessJournal編集部

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