2016年11月、超党派の国会議員による「日本語教育推進議員連盟」(以下、日本語教育議連)が発足した。同議連は、「日本語教育振興基本法」(仮称)を議員立法で制定することを目指す。人手不足が問題化するなか、経済界からは「国が率先して外国人向けの日本語教育に力を入れてほしい」と歓迎の声も上がっている。
今後、日本語教師の資質や地位向上、資格のあり方などが検討される方向に進むことが予想されるが、同議連および同法の目指すところはなんなのか。日本語教育議連の会長代行を務める衆議院議員の中川正春氏に話を聞いた。
外国人労働者100万超え…戦略不足の「日本語」
――日本語教育議連が発足した背景について、教えてください。
中川正春氏(以下、中川) まず、「外国人が必要であるか否か」というご都合主義で考えるのではなく、アジアではすでに人の流動性が高まり、日本にも多くの外国人が入国しているという現実を受け止める必要があります。16年12月の法務省統計では、在留外国人は約238万人、そのうち労働者は100万人を超えています。
そのため、ここ数年、外国人が私たちの日常社会に深く浸透していることを実感する場面が増えてきました。グローバル企業を中心に「高度人材」と呼ばれる外国人が活躍し、コンビニエンスストアや飲食チェーンなどでも外国人留学生がアルバイトとして働いています。
一方、中小・零細企業や農家などでは多くの技能実習生が汗を流し、国際結婚が増え、日系の方が移民先からUターンするなど、日本への定住化が進んでいます。日本の産業を支えてくれる外国人が、着実に増えています。
こうした外国人の方々が日本に溶け込むために必要不可欠なのが、日本語教育です。しかし、日本語または日本語教育については、法令上なんの規定もありません。「国語」を所管する文化庁国語課は存在しても、「日本語課」は存在していません。
次に、グローバル化の進展に伴い、各国は自国語を世界に広める普及活動を実施しています。中国では戦略的に世界各国に「孔子学院」を設置し、中国語や中国文化の普及に取り組んでいます。
日本も、国際交流基金が海外に日本語の指導者を送ったり日本語能力試験を実施したりするなどしていますが、国として戦略的に日本語普及に取り組んでいるとはいえません。ベトナムやインドネシアなどでは第2外国語に日本語を選択できるなど、アジアでの日本語熱は高いにもかかわらず、日本国内外で日本語教育を所管する省庁がないのです。
そこで今回、超党派の国会議員で日本語教育議連を立ち上げ、私は会長代行を務めています。会長は河村建夫衆議院議員です。現在、45名の国会議員が議連に参加しています。
――日本語教育議連の当面の目標は、なんでしょうか。
中川 日本語教育は、制度的にも政策的にも基盤すらできていないのが現状です。日本語は日本文化の原点であり、よりポジティブかつダイナミックに経済活力を引き出すツールでもあります。そのため、多彩な議論を通じて「日本語教育振興基本法」を議員立法によって制定したいと考えています。
9月の臨時国会でたたき台を示し、18年1月から開始される通常国会で審議され、可決の運びになることを希望しています。