――「日本語教育振興基本法」の中身としては、どのようなものをお考えですか。
中川 まず、日本語教育がしっかりできる人材の育成、資格制度、地位・資質の向上を政府として行っていきます。実は、日本語学校には法的な規定がありません。一部の日本語学校は、各種学校や専修学校としての認可を受けていますが、多くの日本語学校は私塾という位置づけにとどまっています。
ここ1、2年、文部科学省や入国管理局が、留学生ビザを付与するに値する日本語学校の基準の見直しづくりに動いていますが、ニーズに応じた日本語学校や学校としての認可や監督権限、質の保証などについては、文科省が所管すべきだと考えています。
一方では、法律によって、日本語学校が海外に進出して日本語の普及を進める態勢を支援するようなシステムもつくりたいと考えています。これは基本法ですから、監督官庁を決めて方向性を定めて、今後の基本政策に生かす手段づくりが主な内容になります。
地方自治体任せだった定住外国人のケア
――定住外国人については日本語教育だけではなく、さまざまな施策において、地方自治体任せで国はあまり関与してこなかった印象があります。
中川 外国人の受け入れについては、留学生、技能実習生、日系人など、入り口がさまざまあります。技能実習生は期限が来れば帰国し、留学生は「日本で働きたい」と希望すれば卒業後に就労ビザが付与されます。なかには帰国する方もいるでしょう。しかし、日系人などのように日本に残り、「日本に永住したい」と希望する方は、条件を満たせば永住資格が付与されます。しかし、その後の外国人のケアについては地方自治体任せです。
なかには20~30年と滞在する外国人もいますが、その子どもの日本語教育も大切です。外国人の子ども同士で固まって母国語のみの会話だけで完結する地域もありますが、それは望ましくありません。
社会統合という視点からも、日本に住む外国人の人権を守り、子どもの教育、生活、労働環境を整備する必要があります。まずは、「日本語を勉強したい」という外国人に対して、その環境を与えられるように整えなければなりません。それには、「日本語教育振興基本法」が必要です。
遺憾ながら、地域コミュニティの中での日本語学習は、地方自治体ひいては地域で熱意を持って取り組んでいる方に依存していたという点は否めません。だからこそ、法律をもって国が直接的な関与をすることが肝要なのです。