石破氏も岸田外相もポスト安倍レースの“有力馬”とはいえ、そのポジショニングは異なる。世論調査ではトップといっても、やはり石破氏は“大穴”であり、岸田外相が“本命”というところなのではないか。
自民党結党以来の危機到来なら石破首相誕生か
では、プロは現在の状況をどう見るか。政治アナリストの伊藤惇夫氏が解説する。
「石破さんが首相になるためには、たとえば度肝を抜くような巨大な新スキャンダルが発覚するといった緊急事態が勃発し、今以上に安倍政権や自民党の支持率が下落することが必須だといっていいでしょう。
自民党が結党以来の危機を迎え、有権者や党員に人気の石破氏を担ぎ出すというシナリオです。何しろ石破派は19人、自民党に8つある派閥のうち数では6番目という規模です。近年の総裁選では党員票のウェイトが増えているとはいっても、まともに総裁選を戦っては勝てません」(伊藤氏)
一方、岸田外相は「引く手あまた」の恍惚と不安を抱えている、といったところのようだ。
「以前からまことしやかに言われているのは、岸田さんが安倍さんを支えればポスト安倍として首相の座を禅譲されるという説です。しかしながら、少なくとも戦後の政治史において、首相の座が禅譲されたことは、ただの1度もありません。やはり、首相の座というのは自らが奪い取るものなんです」(同)
岸田派は池田勇人、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一と4人の首相を輩出した名門派閥・宏池会だ。いわゆる「保守本流」を自任。伝統的に政策通のイメージを持つが、半面、上品で荒事に弱い「お公家集団」と揶揄されてきた。派閥としての勝負弱さを物語る逸話として、2000年、森喜朗内閣の打倒を画策して失敗した故・加藤紘一氏の「加藤の乱」という“汚点”を残している。
「岸田さんが自力で総理総裁の座を目指すにしても、岸田派は43人。党内では細田派、麻生派、額賀派に次ぐ4番目の勢力にすぎません。となると、やはり麻生派との合併といった『大宏池会構想』のゆくえが焦点になってきます。
閣内で政権を支えるにしても、閣外に出るにしても、麻生さんや安倍さんに手綱を握られてはダメです。岸田さん自らが政局をつくるという腰の強さが求められているのは間違いないでしょう」(同)
蓮舫・野田のダブル辞任でも民進党危機は続く
対して、最大野党の民進党は相次ぐ“敵失”の恩恵を受けているはずなのだが、支持率は伸び悩む。先日には、野田佳彦幹事長と蓮舫代表の辞任が発表された。伊藤氏が苦言を呈する。