米中央情報局(CIA)のポンぺオ長官が5月初旬、極秘裏に韓国を訪問し、韓国に昨年亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使や、元朝鮮人民軍幹部や北朝鮮の元党・政府幹部らと会い、金正恩朝鮮労働党委員長の所在に関する情報などについて事情聴取を行っていたことが明らかになった。
その後、CIAや米国土安全保障省の朝鮮半島問題担当の情報要員ら数十人が韓国入りしており、金氏の排除を目的とする「斬首作戦」実行のための情報収集が本格化しているという。これを警戒して、金氏は6月から7月にかけて3週間も動静報道が途絶えたほか、7月から8月にかけても、ミサイル発射実験時以外は同じように雲隠れしていた。
金氏はトランプ米大統領が9月上旬、国連総会での一般演説で金氏を激しく非難したことに対抗して、北朝鮮の最高指導者として初めての直々の声明を発表し、トランプ氏について「米国のおいぼれを必ず火で罰する」と罵倒するなど強気の姿勢を見せている。しかし、実は地下深くに建設したシェルター内に閉じこもって、「いつ米軍が自分の首をとりに来るのか」と戦々恐々とした日々を過ごしているようだ。
「斬首作戦」
在米情報筋によると、ポンぺオ氏の訪韓の目的は太永浩氏のほか、北朝鮮の元要人らと会い、金氏の日ごろの生活パターンや家族などの個人情報に加えて、北朝鮮国内での軍事クーデターや民衆の反乱など体制転覆の可能性について聴取することだった。
これを裏付けるように、ポンペオ氏は訪韓後の7月20日、米コロラド州アスペンで行われた安全保障フォーラムで「朝鮮半島が非核化すれば素晴らしいが、最も危険なのは(核兵器を)支配している人物だ」と語ったうえで、「最も重要なのは、そうした(核)能力から(使用の)意図を持つであろう者を分離することだ」とも指摘し、金氏排除の必要性を強調した。
また、その後の米紙ワシントン・タイムズの単独インタビューでも、「北朝鮮の非核化を外交的手段で実現させることが困難であると判断された場合」、金氏の排除に関する秘密工作の展開など、「斬首作戦」の実行をトランプ大統領に進言する用意があることなども明らかにした。
これに対して、北朝鮮外務省の報道官(スポークスマン)は7月25日、朝鮮中央通信の質問に答えるかたちで、ポンペオ氏の発言に対して「寝言にすぎないが、その度合いを超え、今やトランプ行政府の対朝鮮敵視政策の最終目標がわれわれの『政権交代』にあるということが明白になった」と指摘した。