民進党議員たちの今後
この決断の影には、民進党最大の支持基盤とされる日本労働組合総連合会(連合)の思惑もある。
蓮舫前代表のもとで民進党は、共産党を含めた野党連合の方向へ歩を進めた。かつて民進党は「非自民・非共産」を方向性として持っていたが、自民党一強時代が訪れるなかで、「親共産」ともいえる方向転換を行った。連合は繰り返し、共産党との連携に警告を行ったが、自民党に対抗するために民進党と共産党を軸とした野党連合結成の流れは続いた。
そこにいきなり現れた小池新党の波だ。昨年7月の東京都議選では、民進党はわずかに5議席に終わる一方で、小池氏が率いる都民ファーストは55議席を獲得して第一党に躍り出た。衆議院選挙でも、小池新党が民進党の議席を上回ることが予想され、連合はこれを共産党との連携を断ち切る絶好の機会と捉えたのだ。「選挙で大きく議席を失う前に合流したほうがいい」という、思い切った決断となった。
ただ、小池氏は民進党の議員や立候補候補予定者をすべて受け入れるとは言っていない。改憲や現実的安全保障という、「踏み絵」を踏むことができる者だけが合流できるとしている。現実的には、半分から3分の2の議員や立候補予定者が合流でき、残りは無所属で出馬するか、新党を形成するかしかない。無所属では比例復活はないため、合流しなければ連合の支援もない状態で選挙戦を戦うことになり、小選挙区で勝てる人は限定されるだろう。新党をつくらない限り、希望の党に合流できなかった人のほとんどは落選することになる。
私は民進党の左派にとってもチャンスが訪れたと考えるべきだと思っている。そもそも、民進党は寄せ集めの政党だった。それだけに、具体的な政策になると明確な方向性が打ち出せなかった。すなわち、右にも左にも目配りしたため、意味のないような政策しか出せなかったのだ。それが現在の民進党の低落ぶりにつながっている。
希望の党に合流しない人たちで新たな左派リベラルの政党をつくり、堂々と戦えばいいのだ。共産党と連携、あるいはさらに進めて、合流して新党を結成してもいい。そうすれば、小選挙区でもいくつかは議席が取れるだろう。そして、比例ではかなり取れる可能性がある。
自民党と希望の党、そして左派新党の3極となって今後の政界は動いていくのではないか。以前よりもわかりやすい構図になる。
私は一連の希望の党を中心とした展開がある前は、自民党はほぼ現状維持で勝利すると予想していたが、これまでの流れを見る限り、かなり議席を減らしそうだ。200~250議席となり、過半数確保ができない可能性がある。他方、希望の党は150~200議席になると見込め、自民党にかなり接近するだろう。公明党の候補者の選挙区には、自民党も希望の党も候補者を立てないという特異な現象が現れるかもしれない。
民進党の岡田克也元代表、菅直人元代表、蓮舫前代表、山尾志桜里氏なども、どのような選択をするのか注目される。
今回の次に行われる衆議院選挙が、本当に政権交代を問う選挙となるだろう。それは、いわば初の女性首相をかけた選挙になりそうだ。その前には、参議院選挙があり、東京オリンピックがある。
いずれにせよ、小池氏が一気に政界再編を行っていることは確かだ。これが日本のためになるかどうか――。今後の展開を注視したい。
(文=児玉克哉/一般社団法人社会貢献推進国際機構・理事長)
●児玉克哉
国際平和研究学会(IPRA)事務局長、トルコ・サカリヤ大学客員教授、パキスタン・マリル科学技術大学特別教授、ネパール・トリブバン大学客員教授、日本大学法律経済研究所研究員、CSRジャーナル編集長。三重大学副学長・教授、国際社会科学評議会(ISSC)副会長を歴任し現職。専門は地域社会学、国際社会論、政治社会学など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム理事・事務局長を務めている。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し国際活動や地域創生活動を行っている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。