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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国・習近平独裁完成、失脚なら一斉抹殺も…壮絶な権力闘争=ゴマすり競争の全内幕

文=相馬勝/ジャーナリスト

 この点、習氏の後継者といわれた陳敏爾・重慶市党委書記も無名も無名であり、かつて本連載でも紹介したが、陳氏は習氏が浙江省トップ時代、新聞社社長として習氏のゴーストライターを買って出たことで、その後、とんとん拍子に出世し、今回の党大会で党政治局員に選出されたほどだ。

 話は横に逸れたが、他の2人のチャイナセブンである王滬寧、韓正両氏も側近中の側近。王氏は習氏の外遊や首脳会談などの際は必ず習氏の横にいて、アドバイスをするという重要な役割を果たしている。韓氏は習氏が上海市トップの際に上海市長を務めており、政敵ばかりで固められていた上海市政界で唯一、習氏を助けた側近であったからこそ、今回のトップ・セブン入りが実現したといえよう。

 このほか、チャイナセブン以外の党政治局員は、経済ブレーンの劉鶴氏や大学の同窓だった陳希氏、上海市時代の部下だった丁薛祥氏、黄坤明氏や蔡奇氏は陳敏爾氏と同じく浙江省時代の側近など、習氏とのつながりが強く、長い間、習氏に忠誠を誓ったことで、中国共産党員8900万人のなかでもトップエリート集団である25人のなかに選出されたといえよう。

 中国には「一人得道鶏犬昇天」という言葉がある。それは「一族の中で一人が権勢を握れば、一家眷属だけでなく、その家で飼われていた鶏や犬まで天に上るような良い思いをする」という意味だ。

 また、「驥尾(きび)」という言葉は、単なる蠅でも一日に千里も走る馬の尻尾にくっついていれば、一日で千里も遠いところに行くことができるという言葉であり、今回の党大会をみていると、いまだに中国では「一人得道鶏犬昇天」「驥尾に付す」という言葉が生きているのだなとの感慨を禁じ得なかった。

 これは逆に言えば、なんらかのかたちで習氏が失脚すれば、一族郎党、側近すべてが抹殺されるという意味が含まれていることを、あえて付記しておきたい。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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