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木村誠「20年代、大学新時代」

激変する大学生活は学生にどう影響したのか?オンライン授業が多いほど充実度が低下

文=木村誠/教育ジャーナリスト
激変する大学生活は学生にどう影響したのか?オンライン授業が多いほど充実度が低下の画像1
「gettyimages」より

 朝日新聞の投書欄に、大学の対面&オンライン授業に関する意見が載っていた。20歳の学生は、コロナ禍に悩む業界の努力を挙げて「大学で本当に対面授業が現在必要なのかを考えるべきだ」という意見であった。一方で、68歳の女性非常勤講師は「大学のオンライン授業で、参加する学生が画面や音声をオフにしていて交流が少ないので、学生に授業の感想やおすすめ本を呼びかけたら、予想以上の反響があった」と喜んでいた。

 オンラインでは画面が小さいだけに、参加する学生が積極的に発信しないと、知的な刺激も少ないようだ。かといって、コロナ禍では対面授業が自由にできない事情もある。大学の先生方も試行錯誤であろう。

 当の大学生たちは、その点をどう考えているのだろうか。2020年秋に全国の国公私立大学の学部学生を対象として、全国大学生活協同組合連合会が大学生活の現況と充実感を問うた調査がある。郵送あるいはメールで質問し、ウェブで回答する方式だ。調査の概略は、住まい、登校状況・サークル・就職、生活時間・政治への関心、暮らし向き・アルバイト・奨学金・1カ月の生活費などである。

 調査結果は、大学設置者・大学の規模などの構成比を考慮し、経年の変化をより正確にみるために指定した30大学生協の1万1028名の平均値である。サンプルの特性を見ると、国公立56.1%、私立43.9%。文系52.7%、理系34.3%、医歯薬系13.0%となっている。

1年生ほど弱まる大学生活への充実度

 大学生活の満足感のベースになる充実度について、「充実している」「まあ充実している」「あまり充実していない」「充実していない」の4択から選ぶ設問では、「充実している」(「まあ」も含む合計、以下同)と回答した比率は、2019年秋は4学年合計で88.8%だったのに、2020年秋には74.2%と減っている。その落ち込みは1年生ほど激しく、56.5%と2019年の 89.3%より32.8ポイントも急落している。

 調査結果から、充実度は登校日数や対面授業・オンライン授業と相関が高いことがわかった。たとえば、2020年度は1年生では登校日数が多いほど「充実している」と回答する率が高くなっている。1週間の登校0日では充実度41.2%なのに、5日では76.2%となる。全学年でも同様の傾向があり、2020年は1週間の登校日数が多くなるほど、「充実している」という回答が増加している。

 2019年は、1・3・4年は登校0日では充実度が低いが、2年は登校0日でも充実度は登校2日以上よりも高い。2019年は、充実度と登校日数の関係が比較的薄い。2019年は自分の意思で登校を決めていたのに対し、2020年はコロナで登校したくてもできない状況が生んだ、心理的な差であろう。ちなみに、週の登校日数は全学年で2020年は0日が最多だが、2019年は5日が最多となっている。

 また、大学生活の華であるサークル活動は、入学直後からコロナで登校がままならない1年生の場合、「サークルに所属している」は2019年秋の82.8%に対し、2020年秋は48.7%と大きく減っている。半面、「現在所属していないが、今後入るつもり」は36.5%と多い。2年以上は現在所属組が最多である。さらに、大学生活が充実している1年生の割合は「現在所属している」が最高で66.4%だが、2019年の91.7%より25.3ポイントも低く、参加活動が不完全燃焼なのであろう。

オンライン授業と大学生活充実度の関係性

 対面授業とオンライン授業の割合で見ると、1年生の場合は「すべて対面授業で行われている」4.1%、「対面授業とオンライン授業があり対面授業が多い」7.9%、「対面授業とオンライン授業が同じくらい」5.4%、「対面授業とオンライン授業がありオンライン授業が多い」60.5%、「すべてオンライン授業で行われている」21.5%、「大学による休講中」0.4%となっている。2年生以上は、1年生より「すべてオンライン授業」の割合が高くなっている。

 次に、図表を見ていただきたい。1年生の授業形態で「すべてオンライン授業で行われている」と回答したグループにおける「大学生活が充実している」の割合は42.1%である。その一方で、「対面授業とオンライン授業があり対面授業が多い」の充実度は79.3%で一番高い。

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 一方、2~4年生はすべての授業形態で大学生活が充実している人の割合が70%を超えている。注目すべきは4年生以上で、対面・オンラインの授業形態に関係なく、充実度は84~89%台に収まっている。4年生は本格的な就職活動に取り組んだ1年で、過去3年間の実績があるからであろう。

 このオンライン授業については、当事者の大学がいろいろな調査を実施している。その調査によって数字に微妙に違いがあるが、一定の共通項を大まかにまとめてみよう。

 オンライン授業について、学生にとっては「時間の自由度」「集中しやすさ」「(チャットによる)教員への質問のしやすさ」「復習のしやすさ」「配布資料の見やすさ(手元拡大も)」などが、良かった点として挙げられている。教員からは「リアルタイムで出席率を確認できる」「私語のなさ」のほか、「予習を先行させる反転学習などで復習=授業ができる」という声もあった。

 半面、問題としては、学生・教員に共通して「受講生間のディスカッションや交流機会の少なさ」「通信や機材のトラブル」「長時間の視聴で目が疲れる」などを指摘する声が多い。学生からは他に「課題の多さ」「友人関係構築の不安さ」「実験や実習が難しい」という声や、「メールやチャットでは、図表や統計データなどをつかった質問がしにくい」という学生もいた。

 大学としては、オンライン授業によって海外留学の多様化を進めたり、他大学との授業連携が展開できるメリットも少なくない。ただ、オンライン授業と対面授業を組み合わせた「ハイブリッド大学教育」は自主的に学ぶ学生が一般的であることが前提であり、その点で大学間あるいは学生間の落差がくっきりと出てくる可能性はある。

(文=木村誠/教育ジャーナリスト)

木村誠/大学教育ジャーナリスト

木村誠/大学教育ジャーナリスト

早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『ワンランク上の大学攻略法 新課程入試の先取り最新情報』(朝日新書)。他に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)、『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。

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