安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領による5回目の日米首脳会談が終了した。11月6日、日米は北朝鮮に対する圧力を最大限に高めることや、安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に協力する方針で一致した。
会談の成否をはかる指針のひとつに、会見および共同声明の有無がある。成功度の高い順に共同声明、共同記者会見、個別記者会見となるが、今回は共同記者会見で日米の親密ぶりが強調された。共同声明は発表されていないが、これは事前の予定通りであり、まずは成功に終わったといえる。
会見では、トランプ大統領が北朝鮮問題に言及し、日本との関係を強化することを国際社会にアピールした。また、安倍首相は予定通り「すべての選択肢がテーブルの上にある」というトランプ政権の方針を支持する姿勢を明確にした。これは、北朝鮮に対する大きな抑止力になると考えられる。
また、日米間の貿易問題については、不均衡を牽制するような発言はあったものの具体的な対応には触れず、日本側が懸念していた2国間の自由貿易協定(FTA)への言及もなかった。
アメリカは環太平洋経済連携協定(TPP)をたたき台にするかたちで、FTAなどの枠組みを使って日本に貿易面での譲歩を求めてくると思われていたが、これを避けて問題を先送りできたことは評価できるだろう。
また、これにはアメリカ側のゴタゴタも関係していると思われる。タックスヘイブン(租税回避地)に関する新情報「パラダイス文書」が流出したが、このなかにウィルバー・ロス商務長官の名前が出ており、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に近い企業との取引が取り沙汰されている。
トランプ政権はかねてロシア政府との不正が疑われる「ロシアゲート」に揺れており、現役閣僚のロシア企業との関係は非常にデリケートな問題だ。そのため、アメリカ側の実務対応者も動きにくい状態であったことが予想される。
さらに、レックス・ティラーソン国務長官の更迭問題もいまだくすぶっており、トランプ政権は落ち着いた態勢を取り戻せないでいる。
北朝鮮への独自制裁を追加、資産凍結対象を拡大
安倍首相が会談で明らかにした北朝鮮への新たな独自制裁については、7日に閣議決定された。北朝鮮の国内外で金融取引を行う9団体と26個人を資産凍結の対象にするという内容だ。
日本は、これまでも核・ミサイル開発に関与する団体・個人の資産凍結や北朝鮮に寄港した船舶の入港禁止などの独自制裁を科してきたが、さらに対象を拡大した。また、今回対象となった35団体・個人は、すでにアメリカが9月に資産凍結の対象に指定している。これは、「日米が足並みをそろえて北朝鮮への圧力を強化していく」という意思表示であり、安倍首相が言う「(日米は)完全に一致」を実行に移したかたちだ。
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