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そうでなくても、国民の裁判員制度に対する参加意欲は低下する一方だ。裁判員候補者への呼出状には、「正当な理由がなく呼出しに応じないときは10万円以下の過料に処せられることがあります」という趣旨の記述もされているが、呼び出しがあった者のうち、実際に選任手続きのために裁判所に出頭する人の比率(出頭率)は年々下がり続けている。最高裁の調査では、今年は9月末時点で23.3%。4人に1人も出頭していないのが現状だ。参加する者が減れば、裁判員の構成にも偏りが出る懸念がある。
出頭率の低下の理由として、最高裁は審理予定日数の増加や、人手不足など雇用情勢の変化、高齢化などを原因に挙げているが、今回のケースのように、市民感覚とはほど遠い事件につきあわされることの負担というのも無視できないのではないか。
最高裁が行っている裁判員経験者を対象にしたアンケート調査では、毎年「(非常に)よい経験と感じた」と答える者が95%以上に上っている。ただし、これは判決が言い渡されて裁判が終結し、裁判員たちの気持ちがもっとも高揚し、充実感を覚えている時に行うから、こんな異常な数字になるのだろう。
書面中心の裁判を公判中心に転換したり、裁判員裁判を対象に取り調べの録音録画が捜査機関に義務付けられたりしたことなど、裁判員裁判を導入したメリットもある。しかし、このままでは裁判員制度はじり貧といわざるをえない。
本当に、今のように殺人事件すべてを裁判員裁判とするのがいいのか、という点を含め、今回の事件を機に、裁判員裁判のあり方を、もう一度見直す必要があるように思う。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)
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