北朝鮮がアメリカに反撃しても、すぐに制圧されることになりそうだ。西村氏は「北朝鮮がミサイルをせいぜい10発撃ったとしても、アメリカにすべて撃ち落とされるでしょう」と語る。
「しかしながら、アメリカは一貫して戦争を避けています。米韓合同軍事演習で空母を3隻展開させたことについて『湾岸戦争のときのようだ』と言う人もいましたが、私は違う見方をしていました。
湾岸戦争のときに防衛省にいたのでわかりますが、戦争をするときは半年くらいかけて兵員や武器弾薬を輸送艦でガンガン運ぶのです。しかし、その動きがなかった。空母もイージス艦も潜水艦も来ているけど、輸送艦が来ていない。そのため、『本気ではないな』とすぐにわかりました。戦争をする気であれば、横須賀港などに輸送艦が次々に来ていないとおかしいですから。
また、北朝鮮を攻撃すれば韓国がやられるのはわかっているので、韓国を守るために地上軍を派遣する必要があります。しかし、そういう動きも一切なかった。そうした経緯に鑑みても、アメリカがすぐに北朝鮮へ軍事攻撃を仕掛けるというのは考えづらい。
中国も、戦争は望んでいません。中国が朝鮮半島有事を嫌がる理由として、よく『北朝鮮からの難民が中国に押し寄せるから』『米軍が中国国境まで迫ってくるから』と言われますが、それよりも大きいのは、経済成長が邪魔されるからです。せっかく発展して国が潤っているのに、戦争したらパーになってしまいますから」(同)
「中国が北朝鮮の核を管理」という最悪シナリオ
アメリカも中国も戦争を避けようと考えているのであれば、北朝鮮が核を保有することを黙って見ていなければならないのだろうか。
「『核を保有はさせるけど使わせない』という妥協案はあるかもしれません。たとえば、中国が北朝鮮の核兵器を管理する。中国軍が北朝鮮に入り込んで核を使わせないようにするという妥協案です。でも、それは日本にとっても最悪のシナリオですよね。国際情勢が変化して中国が引き揚げてしまったら、北朝鮮の手に核は残るわけですから」(同)
次回は、金正恩の「斬首作戦」の内容と実行時期などについて、さらに西村氏の話をお伝えする。
(文=深笛義也/ライター)