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強制わいせつ罪、最高裁が成立条件を大転換…「いやらしい意図」なくても成立に

近藤俊輔/弁護士法人ALG&Associates弁護士
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今回の判例変更について

 今回、40年以上も維持されてきた最高裁判所の判断が変わったわけですが、これには以下の事情があるように思われます。

 第1に、今回の事件が「性的な意図」があったとはいえない事件であったということです。被害者もいる事件なので、事件の詳細については最低限にとどめますが、(1)今回の行為は、金銭を借りるための条件としてやらされた行為であること、(2)被害に遭った女の子が非常に幼く、実際に被害に遭った女の子に対して性的に興奮していたとは認定できなかった、という事情があり、「性的な意図」の認定について疑いが残る事件でした。

 第2に、もともと批判もあった判例であり、性犯罪に関する刑法の改正がなされるなどの状況も踏まえ、裁判所としても国民意識と乖離した判例を変更する必要性を感じていたということもあるように思われます。

 こうして、判例の変更がなされ、強制わいせつ罪の成立が認められたわけです。

今後の刑事手続きについて

 そのため、今後は「性的な意図が存在しなかった」という主張自体は認められなくなったので、「いやらしい気持ちで、おっぱいを触ったわけではない」という主張は通じなくなりました。

 しかし、「性的な意図の存在」が刑事裁判でまったく争われなくなるわけでもなさそうです。今回の判決では、「わいせつな行為」に当たるかの判断において、個別的に行為者の意図が考慮されることもあり得るかのように書かれています。

 この考え方によれば、「女性のハイヒールを執拗に触った」というように、ただちに「わいせつな行為」と言えない場合でも、本人に「性的な意図」があれば強制わいせつ罪が成立するべきということになりそうです。

 ですが、本人が「ハイヒールフェチか否か」で、わいせつ行為に該当するかの判断が変わることになれば、「どのような行為が犯罪に該当するか」ということの明確性が保てないという批判もあり得るでしょう。

 また、今回の判例を素直に読んだ場合、「おっぱいを触る」というような、「わいせつな行為」であることがわかりやすい行為であれば、強制わいせつ罪の成立が認められそうです。

 しかし、たとえば「同性愛者の男性が、相手に肉体的苦痛を与えるために、女性のおっぱいを強く握った」というような場合、「わいせつな行為」に該当する言っていいかは疑問が残るように思います。

 今回の判決は、「批判の多かった判例を変更した」という意味で評価できる判決といえます。しかし、個別具体的な事件で適正な刑事手続きを確保するためには、慎重な検討をもって運用していく必要があります。
(近藤俊輔/弁護士法人ALG&Associates弁護士

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