2018年が幕を開けた。
昨年、国際社会は北朝鮮に振り回され続けた。北朝鮮が弾道ミサイル発射を続けて核実験を強行したことで、国際連合安全保障理事会は制裁決議を何度も採択したほか、アメリカは約9年ぶりに「テロ支援国家」に再指定した。また、日米中はそれぞれ独自の制裁を科している。
一方で、昨年は世界の主要国で政治的な節目を迎えた年でもあった。アメリカではドナルド・トランプ政権が発足し、中国は5年に一度の中国共産党全国代表大会で習近平政権の2期目がスタートした。日本においては、衆議院議員選挙の大勝を受けて第4次安倍晋三政権が発足した。ヨーロッパでも、フランスの大統領選挙やドイツの総選挙をはじめ、各国で重要な選挙が相次いだ。
日米露の命運を左右する、3つの選挙
では、今年はどんな年になるのだろうか。まず指摘したいのは、日米露で重要な選挙が行われるということだ。
アメリカでは、11月に中間選挙が行われる。これは上下両院議員および州知事などの選挙だが、4年に一度の大統領選挙の合間に行われるため、「現政権の通信簿」の意味合いを持つ。仮に与党が大敗すれば、その後の2年、政権はレームダック化してしまうわけで、次期大統領選挙での再選も厳しくなる。
だからこそ、トランプ大統領は公約だった1.5兆ドル規模の大型減税政策を昨年末に成立させたわけだ。今後は、同じく公約に掲げている「1兆ドル規模のインフラ投資」も本格化させることで、支持拡大に動くだろう。
また、すでに世論が米朝戦争に傾きつつあるアメリカ国民に対して「強いアメリカ」の姿を見せるために、北朝鮮に軍事行動を起こす可能性もある。国威発揚につなげて中間選挙を有利に戦うという狙いだ。
そのアメリカとの間で「ロシアゲート」が取り沙汰されているロシアでは、3月に大統領選挙が実施されるが、現職のウラジーミル・プーチン大統領の再選がほぼ確実視されている。そうなれば、首相時代も含めてプーチン支配が24年にわたって続くことになる。名実ともに“帝政ロシア”の復活を印象づけることになりそうだ。
日本では、9月に行われる自民党総裁選挙が注目される。昨年、党則が改正されて任期が「連続3期9年」に延長された。そのため、安倍首相が3選を果たせば、安倍政権は21年9月まで続く可能性がある。そうなれば、日本憲政史上最長の政権の誕生だ。そして、その先にあるのは悲願の憲法改正だろう。安倍政権がかねて掲げる「戦後レジームからの脱却」は、改憲が実現して初めてかなうことになる。
世界経済のカギを握る、FRBの議長交代
昨年、世界経済はゆるやかな成長基調であったが、今年はどうなるか。カギを握るのは、米連邦準備理事会(FRB)だろう。昨年12月に半年ぶりに政策金利引き上げを行ったFRBでは、2月にジャネット・イエレン議長が退任し、後任にジェローム・パウエル理事が就く。
基本的にはイエレン路線を踏襲するものと思われ、利上げペースも昨年と同じ3回を見込む。北朝鮮情勢などのリスクもあり、予定通りに実施されるかどうかは不透明な部分もあるが、順調に進めばFRBが目標とする物価上昇率2%に近づくだろう。
『日中開戦2018 朝鮮半島の先にある危機』 今後の安倍政権の課題だが、まずは北朝鮮の問題、そしてその後には安全保障上の問題として中国の問題がある。中国では、10月の共産党全国大会で、習近平体制がますます磐石なものとなった。そして先祖返り的に「新時代の中国の特色ある社会主義」が推し進められようとしている。今後は、政治的にも経済的にも中国との間にますます軋轢が増えるだろう。そういう意味では、すでに日中間の戦争が始まっているともいえる。 世界各国でも、ナショナリズムを掲げる政党が躍進しており、まさに冷戦時代へ巻き戻った。このような世界の大きな流れを踏まえた上で、あらゆる角度から日本と中国の現状を分析することで、戦争の可能性について探っている。