加計学園の問題と絡めて、マスコミでは「もりかけ問題」などともいわれてきた。
「加計のケースは百歩譲ったとして、一応粛々とルールに則ってやっているわけですから、法に違反してないという主張は一理ある。しかし、森友に関しては明らかに背任、犯罪をやっているわけなので、忖度という言葉を軽々に使わないほうがいい。表面的なところばかりに目を奪われてしまうと、森友問題に類するような財務局の国有地売却に関する過去の不正な事案について、蓋をされてしまいかねない。そこまで追求していく姿勢があっていいんじゃないかと思います。
役所というのは前例主義なので、ゴミの量を多くあるかのようにしたり、重要な公文書を棄ててしまうというのも、過去にも事例があったからやったとしか考えられない。森友の件だけで終わったら、たぶん財務局はほっとすると思います。過去の財務局長や地方の財務局は、いつ自分のところに火の粉が飛ぶかもわからず戦々恐々としているかもしれません。そう考えたら、この問題だけで終わらせてしまうのはよろしくないと思います」(同)
財務省の過失
忖度という言葉を流行語に押し上げた森友問題だが、これまでと比べて特別国会での議論のマスコミでの扱いは小さかった。
「森友学園では、籠池泰典前理事長が積極的に出て証言しており、恩恵を受けた側が『受けました』『安倍首相と関係がある』と言っているわけですから、やっぱり非常に重大な利益誘導ということになってくるわけです。そのことをしっかりと野党もマスコミも追及すべきじゃないかと思います。便宜を与えたほうにまったく過失がないというのは、おかしな話で、本来はそちらのほうが問われるべきです。
財務省が過失を問われないというのは、おかしな処罰の仕方です。今の安倍政権に刃向かうものにはすべて厳しく対処し、守るものについてはまったくお咎めなしというのは、国民から見ても非常にアンフェアです。籠池さんは詐欺罪で訴えられているわけですが、国に対する背任容疑のある財務省は罪をまったく問われない、あるいは問うのが難しいというのは、国民からしたら納得できません。籠池夫婦は拘置所に入ってすでに4カ月が経過して、一方の佐川さんは国税庁長官に出世しているというのは、おかしな話です」(同)
会計検査院の報告書に対して、麻生太郎副総理・財務相は「財務省としては結果を重く受け止めなければならない」と語るに留まった。
「会計検査院というのは、まさに国から独立して公正に判断する組織であり、そこが最終的に売却額は根拠がないと結論づけたのであれば、財務省はそれを厳粛に受け止めるだけではなく、反省が必要なわけです。指摘されたことに対して徹底的に事実を解明する、きちんと説明責任を果たして初めて厳粛に受け止めるという意味になる。
財務省の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で議論が始まって、国有財産を売却する手続きの透明性を高めるための議論をしたときに、財務省は説明責任を果たしていないという意見が出ました。諮問機関は答申するわけですから、その答申に従ってきちんと説明責任を果たすのが財務省トップである麻生さんの役割です。この審議会も中途半端に行われて、『これから透明性を高めるようにがんばります』みたいに終わってしまわないかが懸念されます。過去まで遡って、審議会がきちんと発言できるかどうか。そこは見守っていく必要があるのではないかと思います」(同)
財務省の闇に光が当てられることがなければ、籠池夫婦はスケープゴートにされたのだと、受け止められかねない。
(文=深笛義也/ライター)