ふるさと納税による税の流出がなくなることで、東京都は財政力を取り戻し強大化する。強大化することで、政府に歯に衣着せぬ物言いをするようになる。外国の国家予算とも肩を並べる東京都だけに、簡単に国の言うことには従わない。それは、歴代首相が東京都知事に手を焼いてきたことからも窺える。長らく、政府や中央官庁にとって常に東京都の存在は目の上のタンコブだった。
それでも政権与党・自民党と蜜月の関係を築いていれば、いざというときに両者は協力し合う間柄にあった。しかし、このところその間柄は冷え込んでいる。理由はいくつかあるが、「小池百合子都知事が就任して以降は、政権との関係はさらに距離が開きつつある」(東京都職員)ともいわれる。
政府による地方消費税の収奪
そんな小池・東京都を潰す策として政府が繰り出した一手が、消費税の清算基準の見直しだ。東京都の強さの源泉である“税収”を奪うことで、政府は東京都を意のままに操ろうとしているのだ。
現行8パーセントの消費税は、6.3パーセントが国税分、残り1.7パーセントが地方分として徴収されている。この1.7パーセントの部分は地方消費税と呼ばれ、政府が定める配分基準を用いて47都道府県に分配されることになっている。
地方消費税は年間で約5.0兆円前後あり、東京都は毎年7500億円ほどの地方消費税を得てきた。政府は地方消費税の清算基準の見直しを始めた。新たな基準で地方消費税を分配すると、東京都は最大で2000億円もの減収というダメージを負う。
これに、小池知事は黙っていられなかった。毎週開催される都知事会見では強く反対の意を表明し、自民党税制調査会の重鎮を回って陳情を重ねた。しかし、小池知事の陳情作戦は奏功せず、東京都が地方消費税を減収させることは避けられない。前出職員とは別部署の職員は、こう憤慨する。
「1989年に消費税が創設された際、それまで地方自治体の税収とされていたトランプ類税や電気税などの間接税が整理されて消費税に一本化されました。そうした経緯から考えると、本来、消費税収はすべて地方の税財源になるのがスジです。47都道府県間で税収格差があって、それを是正する目的があるのはわかります、しかし、政府が消費税の清算基準を強行的に見直しすることは、上からの押し付けであり、横暴そのものです。地方自治体の自立、地方分権にも逆行する話です」
ふるさと納税ブームが沈静化に向かい、ようやく税の流出にブレーキがかかる気配を見せていた矢先、東京都は政府による地方消費税の収奪という新たな危機に直面した。税金争奪戦は、新たな局面に入りつつある。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)