2月16日から確定申告の受け付けが始まった。しかし、国の徴税事務のトップである佐川宣寿国税庁長官(前財務省理財局長)が森友学園への国有地売却問題について説明をしないままでいるため、現場では納税者から不満の声があがっているという。
佐川氏は以前国会の答弁で、森友学園への国有地売却に関する交渉記録をすでに「廃棄した」と説明していた。ところが今年の1月になって森友学園との交渉記録と思われる資料が発見されたため、佐川氏が国会で虚偽答弁をしていたと疑惑の目が向けられることに。麻生太郎副総理兼財務相はそのデータについて交渉記録ではないと佐川氏を擁護していたが、野党は「これのどこが交渉記録じゃないんだ」と反論。
そして佐川氏からの説明がないまま確定申告が始まることについて、野党は「自分は逃げ回って国会にも来ないのに、国民には確定申告に来てくれというのは道理が通らない」「税の信頼が保てるのか?」と追及し、麻生氏は確定申告で問題が起こる可能性を認めていた。
こうしたなかで始まった今年の確定申告。すると案の定、各地で佐川氏の対応に反発する動きが起こり、東京では財務省本庁前に1,000人以上集まるデモが発生。16日配信「朝日新聞デジタル」記事によると、デモの参加者たちは「自分たちは書類を捨てておいて、納税者には『書類をとっておけ』というのは矛盾していると思う」「佐川さんの国会答弁はウソに違いない。納税するのがバカバカしいと思う人もいるだろう」と話しているという。
さらに17日配信「YOMIURI ONLINE」記事によると、都内の税務署職員が税務調査に訪れた企業の社長に領収書の提出を求めた際に、「おたくのトップは書類を隠してたでしょ」と責められるという事態も起こっているという。
インターネット上でも今回の確定申告について「他人に厳しく自分に甘くは通らない」「トップが書類を破棄して逃げ回ってるんだから、示しがつかないのは仕方ない」「こうなる事を予測出来なかった政府が情けない」といった声が続出。また、非のない現場の職員が責められていることに同情する声も出ている。
一方、小沢一郎自由党代表の事務所公式Twitterは、2月16日に「納税をよびかけるはずの国税庁長官は雲隠れ。記者会見も拒絶。全国の税務署には既に多くのクレームが寄せられているとのこと。正に国民ではなく総理個人を守るためだけの行政。権力の私物化を後押しする行政。『王様は裸だ』と、まず行政の現場が声を上げないといけない」とツイート。
元衆議院議員の三宅雪子氏も2月17日に自身のTwitterで「確定申告で頭痛い。領収書1枚見つからなかったり。あわないの全部『白紙領収書』でよければどんなに楽か。ふ・ざ・け・る・な と自営の人は思いますよ」と苦言を呈している。
報道によれば、現在、佐川長官は自宅ではなくホテルに宿泊し、マスコミをまくために毎日わざわざ遠回りして出勤するという日々を送っているという。まるで犯罪者であるような振る舞いだが、政治ジャーナリストの朝霞唯夫氏はこう苦言を呈する。
「本来であれば政府が監督指導の権限を使い、佐川長官に記者会見や証人喚問の場に出させて発言させるべきです。国税庁は国民から税金を徴収するという大切な役割を担っています。そのトップにあるまじき行動です」
今後もしばらく続く確定申告の日々。まだまだ問題が出てくるかもしれない。
(文=編集部)