ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 大学受験で不合格→訴えて合格?  > 2ページ目
NEW

大学受験で不合格→裁判所に訴えて「合格」になるケース?

文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士、孫佳音/早稲田大学大学院法務研究科2年生
【この記事のキーワード】, ,

 また、司法試験の合否の判定が違法であるから正しい合否の判定をしろ、という請求に対して、昭和49年9月26日、最高裁は、「司法試験の合否の判定は、裁判官、検察官や弁護士となろうとする者に必要な学識およびその応用能力を有するかどうかを判定するものであるため、その性質上、そのような判断をするプロである試験実施機関の最終判断に委ねられる事項であり、裁判所が法律を使って判断し、この争いを解決するものではなく、裁判の対象とはならない」としています。

 さらに、技術士国家試験で不合格になった人が起こした「自分は合格であるはずだから結果を合格に変更しろ」という請求に対し、昭和41年2月8日、最高裁は、「法律を使って解決するに適さない単なる政治的または経済的問題や技術上または学術上に関する争いは、裁判を受けうべき事柄ではなく、今回争っている国家試験の合否は、技術上または学術上に関するものであるため、裁判の対象とはならない」としています。

3.「採点ミス」を理由に裁判所に訴えを起こせる?

 
 これを本件に当てはめてみると、記述で答えさせる問題の場合、問題となった解答が本当に正しいかについては学術上に関する争いであるといえ、問題を作成した先生のほうがくわしく、大学入試の素人である裁判所が判断することは原則できません。

4.しかし、起こせる可能性も…

 もっとも、例外的に裁判所に不合格を取り消してもらえる可能性もあります。

 たとえば、センター試験と各大学個別の試験と面接を総合して合否を判定する国立大学医学部入試で、面接以外では合格点を上回っており、面接も特に不適切な回答をした覚えがないにもかかわらず不合格とされた受験者が、年齢による差別を理由として不合格になったに違いないとして合格を求めた事案について、東京高裁は次のようにしています。

「入学試験における合否の判定は、試験実施機関の最終判断に委ねられるべきものであり、裁判の対象となるとはいえないが、入学試験における合否の判定にあたり、法律に反する判定基準、例えば、合理的な理由なく、年齢によって差別が行なわれたことが明らかである場合には、それは入試の目的である医師としての資質、学力の有無とは関係のない事柄によって合否の判定が決まったということになり、試験実施機関の最終的な判断に委ねる必要のない、裁判所が具体的に法律を適用して審判しうる事柄である」

 すなわち、大学入試の不合格の理由が、学術上に関するものでなく、「年齢による差別」という憲法違反(憲法14条違反)が問題となるのであれば、それは法律の問題であるため、法律のプロである裁判所が判断できるわけです。

 したがって、「採点ミス」自体ではなく、なんらかの「多事考慮」がはたらいて不合格となったことを主張するならば、裁判所で「合格」を勝ち取ることができるかもしれませんね。
(文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士、孫佳音/早稲田大学大学院法務研究科2年生)

大学受験で不合格→裁判所に訴えて「合格」になるケース?のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!