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奨学金「批判」の誤解…滞納者の半数、返済義務を認識せず利用

取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト
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――返済計画のシミュレーションが説明された資料は渡されないのですか。

本山 今はどうなっているのか、わかりませんが、私が説明を受けた時は、細かい資料が一式渡されて、その中に入っていました。しかし、気づかなかった学生もいるのではないでしょうか。大学別に延滞率が公表されるようになったので、大学側も返済について詳しく説明したほうがよいと思います。

――学生が授業料減免制度を知れば、奨学金の負担が減るはずですが、大学側は積極的に広報しないのですか。

本山 広報していてもうまく伝わらないのと、授業料減免制度があることをメディアが報じないので、多くの学生が知らないのだと思います。

――奨学金の説明会で減免制度は説明されないのでしょうか。

本山 私の時にはありませんでした。減免制度については掲示板に貼りだされていました。もしかしたら奨学金の資料の中に入っていたのかもしれないとも思いますが、ただ、減免制度を知ることができたのは大学に入ってからでした。授業料を用意できなくて大学進学をあきらめてしまう高校生も少なくないので、そういう高校生が「授業料を免除されれば大学に行ける」と前向きになれるような広報が必要だと思います。高校の先生にも減免制度を知っていただきたいと思います。

――高校の先生は知らないのですか?

本山 知らない先生が結構多いと思います。

クラウドファンディングの活用

――給付型奨学金については、政府が制度をスタートさせますね。

本山 ただ、予算制限があるので、今のところ住民税非課税世帯、生活保護世帯、児童養護施設出身者などに利用できる学生が限られています。こうした対象には該当しなくても困っている学生は多く、大学生の2人に1人は奨学金を利用していますが、この層の問題解決にはなりません。

――そうなると、本山さんが提言されているように、クラウドファンディングによる奨学金の確保などが有効になってくると思います。

本山 クラウドファンディングなどで民間の力を活用するとか、大学が給付型奨学金制度をつくることが必要だと思います。ただ、日本ではこうした取り組みができていません。アメリカの大学に比べて、日本の私立大学は寄付金の募集活動が弱いと思います。

――日本の場合、私立大学の寄付金は卒業生から集めることが多いと思いますが、新設大学では、多くの卒業生が多額の寄付をできるだけの財をなす年齢になっていないという問題もあるのでしょうか。

本山 いえ、卒業生に頼らなくても取り組み方次第で寄付を確保できます。自治体と組んで、ふるさと納税から寄付を募っている大学の例がいくつかあります。

――お話を聞いていると、奨学金にまつわる問題は入り口に問題があると感じます。減免制度や給付型を知らないために大学進学をあきらめるとか、貸与型には返済が伴うことを理解するとか。

本山 おっしゃる通りです。日本学生支援機構はこれまで延滞金の回収という出口に力を入れてきましたが、これからは大学に対して、こういう説明をしてほしいとか、わかりやすい資料をつくってほしいなどの要請をすることが必要になってきます。現に同機構のホームページは、かなりわかりやすくなってきました。

――本日はありがとうございました。
(取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト)

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