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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国、民主化のうねり始動…北京大学、習近平「独裁体制」批判が相次ぐ

文=相馬勝/ジャーナリスト
中国、民主化のうねり始動…北京大学、習近平「独裁体制」批判が相次ぐの画像1提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ

 中国の名門校、北京大学では5月4日、習近平国家主席も出席して開学120周年記念式典が行われた。ところが、この慶祝行事を台なしにしようと狙ったかのように、北京大学のキャンパスの一角で習氏について「毛沢東主席と同じく、個人崇拝を大々的に行い、自分の名前を憲法や中国共産党の党章に書き加えて、自らを美化するとともに、憲法の規定を修正して国家主席の任期を廃止するなど、権力を私物化している」などと激しく批判する計24枚もの壁新聞が張られたことが明らかになった。

 壁新聞は4日午前11時頃、もともとは20年以上も前に壁新聞などの掲示板があった「三角地帯」に貼られたが、学内を巡視していた監視員が発見し、掲示されてから10分後に撤去されたという。

 中国では香港や海外のメディアを通じて、インテリ層を中心に習氏独裁への警戒が高まっていると伝えられるが、中国内で公然と習氏を批判する壁新聞が登場したことがわかったのは初めてだ。米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が北京発で報じた。

 この壁新聞は「党章を維持し、中国は絶対に個人崇拝に反対して、憲法を堅守し、国家指導者は必ず任期制を実行しなければならない」と題するもので、全文が毛筆で書かれており、北京大学生物学科の卒業生で、今年73歳の樊立勤氏の署名が記されていた。その内容の概要は以下のようなものである。

「毛沢東は個人崇拝を推進したことで、無数の中国人民を何回も動乱の中に追い落として大きな被害を与えた。同時に、人民民主や党内民主といった制度を破壊してしまった。この結果、科学思想や学術的な研究などに大きな打撃を与え、国家の綱紀は糞尿にまみれ社会すべてを恐怖の底に陥れたのである。民衆は頼るべきものを失い、食事も満足にできず、数千万人もの人民が餓死し、ついに毛沢東が死去した時には経済状態は全面的に崩壊していたのである」

「習近平は個人崇拝を大々的に行おうとしている。毛沢東と同じく、歴史の悲劇は繰り返され、国家は文化大革命時代と同様、バラバラに分裂する可能性がある。人々はもっとも警戒すべきであろう」

北京大学の変節と、言論統制の強化

 このような過激な文章を書いた樊氏とは、どのような人物だろうか。樊氏をよく知る北京大学出身者で、在米の中国人民主化運動指導者でもあり、中国の政治問題を論じている華字月刊誌「北京の春」の元編集長、胡平・名誉主幹は次のように語っている。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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