日大アメフト部・内田前監督、自身の強大な権力への過信がアダに…選手に責任かぶせ自己保身
アメリカンフットボールの日本大と関西学院大の定期戦で、関学大の選手に悪質なタックルをして負傷させた日大の宮川泰介選手が、日本記者クラブで記者会見した。宮川選手は、悪質なタックルをした理由について、内田正人前監督とコーチから「1プレー目で相手のクオーターバックをつぶせ」「つぶしたら(試合に)使ってやる」などと言われていたことを明らかにした。監督とコーチの指示にもとづいて反則を犯したと主張したわけである。
宮川選手は、「自分にアメフトを続ける権利はない。やるつもりもない」と競技から引退することを明言しており、相当の覚悟を持って会見に臨んだように見える。だから、彼の主張は信憑性が高いと私は思う。
一方、日大広報部は、内田前監督が学内の調査に対して「違反をしろと言っていない」と述べたと発表し、関学大への回答書(15日付)でも、「指導者による指導と選手の受け取り方に乖離(かいり)が起きていたことが問題の本質」などと回答している。つまり、監督の指示があったことを否定し、選手の「受け取り方」のせいにしたわけで、うがった見方をすれば、学生である選手に責任をなすりつけているともいえる。
学生スポーツの指導者、しかも日大の常務理事という幹部の立場にありながら、このようにふるまうのは一体なぜなのか?
こうしたふるまいは、次の3つの要因によると考えられる。
(1)自己保身
(2)想像力の欠如
(3)否定の効用を過信
(1)自己保身
内田前監督が、悪質タックルへの指示を否定したのは、何よりも(1)自己保身のためだろう。内田前監督は、人事を担当する常務理事のうえ、理事長に次ぐ、実質大学のナンバーツーという。人事権を握っているのだから、その権力と影響力は強大なはずだ。選手への指示を認めれば、それをすべて失いかねないので、否定し続けるしかない。
(2)想像力の欠如
また、(2)想像力の欠如も、このようなふるまいの一因と考えられる。内田前監督が19日の羽田空港での会見で、指示の有無について質問されると「ここでは控えたい」「文書を出す」と繰り返したことが、被害者の選手の父親の怒りを一層かき立て、警察に被害届を出す事態になるとは、思ってもみなかったのではないか。
まして、宮川選手が記者会見で監督とコーチの指示にもとづいて反則を犯したと主張するとは、想像だにしなかったはずだ。内田前監督は、宮川選手の試合に出たいという気持ちにつけ込んで巧妙に操作していたように見えるので、その宮川選手が競技から引退する決意をしてまで、監督の指示があったと証言するなど、想定外だったにちがいない。