「顧問は神様」「上級生は絶対」――日大では、附属高校でもそんな雰囲気がまかり通っているらしい。「自分で考えて行動しろ」と言われて、本当に自分の体力に合わせたトレーニングをすると、すぐに鉄拳制裁だという。
「でも、日大OBの夫は『部活動なんてそんなものだ』と言うし、本人も『辞める』と言わないから、いいんだと思っていました。ただ、お正月に部活はないのに『初詣はチームで行く』ということになって、休みなのに家族より部活を優先させられるのは、ちょっとおかしいと思っていました。でも、そうしないと、実力があってもレギュラーには選ばれないんだそうです」(同)
抱いた疑問は膨れ上がり、ひとつの決断に至った。
「息子は日大には行かせません。だって、生徒を守ってくれないんでしょ? 高い授業料を取って、そんなのね……日大のイメージが悪いので、就職にも影響しそうですし。ほかの大学を受験させて、運動部には入れさせない。それが、母親としての気持ちです」(同)
この女性は、そう言って席を立った。
「まだ入学したばかりだから、『今のうちに転校できないか』って考えています」と語るのは、日大の附属高校に娘を通わせる母親である。
運動部に所属しているわけではないが、「日大には行かせたくない。大学があれなんだから、附属もそうなのでは?」と考え始めたという。そして、当の娘も「日大っていうのが嫌」と言い出しているようだ。合格したときは家族旅行をするほど喜んでいたが、今では「日大の制服を着たくない」とこぼしているという。
発端は大学のひとつの運動部が起こした騒動だが、大きな組織だけに、その余波は末端にまで及んでいるようだ。
取材を進めるなかで、退学届を準備している現役の日大生もいた。提出はしていないが、入学してまだ2カ月なので「今ならやり直しがきく」と考えているという。
「結局、『学生なんて代えのきく人形』と思っているのがはっきりわかりましたよね。そんな大学で学ぶことって、ないような気がします。関学は監督もディレクターも、そして被害者の親も、学生の盾や防波堤になって必死に守っているのが伝わってきます。この差は歴然で、唖然としました。いっそのこと、関学を受け直そうかと思っています」(日大生)
内田前監督と井上前コーチの会見では司会者が「(日大のブランドは)落ちません」と言い放ったが、マンモス校の矜持は内部から崩壊し始めている。
「体育会系は就職に有利」が崩壊?
日大に限らず、これまで「体育会系の学生は就職に有利」といわれてきた。しかし、金融系企業の人事担当者に聞くと、「そんなに甘くない」と即答された。