「確かに、体育会系は体力もあるし、チームワークも身についています。ただ、私たちがほしいのは即戦力とスピード感。そうなると、体育会系のなかでも、特に自分でゲームメイクができる人材ということになります」(人事担当者)
「監督の指示であればルールを破っても仕方ない」という精神では、コンプライアンスに違反する可能性がある。また、緊急時に上司の命令や判断を待っているようでは、大事なビジネスチャンスを逃す可能性がある。そのため、ある程度の判断力を有していないと務まらない。それが、今のビジネスの現場なのである。
「もちろん、日大のアメフト部員は自分で判断できる能力を備えているでしょう。でも、ときに『監督の言うことには絶対に従う、たとえルールを破ってでも』という思考に至ることもあるかもしれない。現役の部員が今度どう行動するか、大学は守ってくれないので、そこでどう判断するのか……注目している企業の人事担当者は少なくないと思いますよ」(同)
3年前のラグビーワールドカップ。日本は当時世界ランク4位だった南アフリカに勝利し、「史上最大のジャイアントキリング」といわれた。試合終盤、選手たちはエディー・ジョーンズヘッドコーチの指示に背いて逆転を狙いにいき、実際に大番狂わせを成し遂げた。今の企業が求めているのは、体育会系のなかでも、そうした戦況に合わせた素早い判断力を持つ人材なのかもしれない。
「一度、つぶれてしまえばいいんです」
今回の騒動が日大のイメージを大きく損なっていることについて、異論を挟む人は少ないだろう。では、日大出身者はどう見ているのか。
「一度、つぶれてしまえばいいんです。そうしないと、誰のための大学か、経営陣も理解しないのではないでしょうか」
これは、日大を卒業して事業を興している男性の言葉だ。最初の頃は「内田さんは理事長のお気に入りだからね」程度にしか受け取っていなかったが、言い逃れに終始し反省の色を見せない経営陣の姿勢に、今や憤りは爆発寸前だという。
「経営陣がどんなに自分の身を守りたいと思っていても、それは日大が存在してこそでしょう。それすらわからないバカ者たちということです。生徒ひとり守れない組織が全体を防衛できるわけがない。もう、私のまわりの日大OBはそれくらい怒っています」(日大OB)
幼稚園から大学院までを合わせると、日大グループの生徒数は11万5000人を超える。確かに、この騒動で日大のイメージは地に堕ちた。しかし、在校生のことを第一に考え、今からでも正しい対応と真摯な姿勢を示せば、まだ間に合うかもしれない。
(文=編集部)