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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

北朝鮮、米朝会談後に貿易大国化か…高度なIT技術と米国資本を活用、すでに資本主義導入

文=相馬勝/ジャーナリスト

 次に、北朝鮮では近年、企業経営責任請負制など資本主義的な経済モデルを導入するなど、1980年代の中国における改革路線導入の初期的段階にあるといえ、中国の経験をうまく活用すれば数年間で経済開発は軌道に乗る素地がある。

 第3に、あまり知られていないが、北朝鮮のIT産業のレベルは相当高いこと。これは、北朝鮮が国家丸抱えで優秀な人材を育てており、高校生や大学生のなかには欧米諸国のプログラマー並みのスキルを持つ人材もいるとされる。北朝鮮では軍がハッカー集団を形成し、サイバーテロを行っているとの報道もあるが、軍のITレベルは極めて高い。彼らを利用すれば、高度なコンピュータプログラミングなども可能とみられている。

 張教授は次のように解説する。

「金氏が最高指導者に就任してから、北朝鮮は短期間で、大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功し、核弾頭の小型化、強力化にも成功したが、それは軍を中心とする人材の優秀性を証明している。逆に言うと、北朝鮮の労働能力レベルは良質で廉価だが、優秀な人材は軍に取られて、北朝鮮全体では実質的な労働力不足に陥っているともいえる。農業や軍事産業に関係がない単純な作業は女性に任されていることが多いという実態は見逃せない。

 これらの問題を解決すれば、北朝鮮経済はインフラ建設や鉱産資源などのエネルギー開発、第2次産業を中心にした産業育成、その次には第3次産業の拡大など、大きな発展の能性を秘めているといえよう。

 それらの原資になるのが、中国改革開放路線の初期段階と同じく海外資本だ。外資が今後、北朝鮮に流入するかしないかは、まずは今回の米朝首脳会談を成功させて、中国、韓国、日本など近隣諸国との関係を良好にできるどうかにかかっている。その意味で、金氏が、トランプ大統領が主張する非核化を全面的に受け入れることができるかどうかが重要なポイントになる」

 米朝首脳会談の行方に注目が集まる。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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