「政治を巻き込む」のは常識
「新潟県庁にいた経験から言うと、地方自治体が補助金を取るとか認可を取るというときに、政治を巻き込んでいくっていうのは当たり前のことです。首相まで至るということはほとんどないでしょうけど、関連する族議員とか県選出の議員を巻き込むのは常識です。加計学園と安倍首相との関係も知った上で、普通に進めてきたことなのだと思います。
地方自治体は、活性化していかないと、これからどんどん人口が減って消滅するところがいっぱい出てきます。東京の豊島区でさえ、なくなると言われるくらい、人口減少と過疎化が激しいです。何を起爆剤にして地域活性化を図るかという動きのなかで、大学誘致というのはひとつの手段です。若者たちが集まって、消費が促進されますから」
開学してすでに2カ月が過ぎているが、地元にどのような影響が出ているのだろうか。今治市企画財政部企画課に聞いたところ、以下の回答を得た。
「入学者186名の93.5%を占める174人が市内の賃貸マンション等に下宿しており、大学周辺に複数のマンション新築やリフォームが見られ、学生や教職員の入居を見込んだ大規模改装の動きも出ております。商業施設などにおいて賑わいの創出が見られ、また、行政や地域、産業界と大学が連携して、地域の活性化に向けたさまざまな取り組みが動きだしております」
加計学園の獣医学部建設が17年11月に正式に認可される前の同年3月に、大学用地として今治市は市有地16.8ヘクタール(評価額36億7500万円)を無償で学園に譲渡し、校舎や研究棟などの建設費約192億円の半額を愛媛県(32億円)と今治市(64億円)が補助金として支給することが決定していた。
「無償譲渡をとやかく言う人もいるんですけど、それほど使い道のある土地だったのでしょうか。大学や工場の誘致によって地域活性化を図るために、思い切って補助金を突っ込むということもよくあることです。今治市を活性化するために、ほかに何かあるのかと言われたら、何もないと言う人のほうが多いのではないでしょうか。設置認可が下りるという前提で動くというのは、大学の場合よくあると思います。大学の設置認可には長期間かかりますが、土地がないと設置認可の申請のしようがないので、無償譲渡はその前にやっておかないとならない。そういう側面からの判断もあり得るとは思います」(中野教授、以下同)