政策全体に歪みが生じてる
補助金を投入して誘致した工場などが衰退してしまう事例もあるが、地方自治体の運営にも経営的な手腕が必要ということだろう。
「地方自治は『民主主義の学校』と言われます。その意味では情報公開、税金の使い道の透明性という観点からは、加計学園の獣医学部は問題があるでしょう。不透明なことが今回の問題の発端になっていると思います。52年間つくられなかった獣医学部が認可されたことを、悪いことだとは思いません。衰退している四国の経済を活性化させるために、愛媛に持ってきたということも納得できます。ただし、そこには透明性の高いプロセスと合理的な理由が必要不可欠です。
安倍首相が絡んでいることを愛媛県や今治市が知っていたのに、なぜ伏せていたのかというプロセスの不透明性が、やはりこれに関しては最も問題だと思います。安倍首相のほうも、『加計さんとは昔から友達なんだ。だけどそれとこれとは別であって、諮問会議で厳正に議論してもらって決まったんです』というふうに最初から言っていれば、それを踏まえた公正な基準に基づいて、京産大か加計学園のどちらかが選ばれていれば、何も問題ではなかったんですよ。それを『獣医学部のことは知らなかった』というようなことを言うもんだから、あとから矛盾が出てきて、『お友達のために便宜を図った』『えこひいきじゃないか』みたいに言われているわけです。
金の延べ棒が動いていたとか、総理の懐に1億円入ってたとか、そういうことであれば完全に贈収賄ですけど、そういうことはない。昔の田中角栄とか金丸信みたいな、えげつない話じゃないわけですよ
ただ確かに、首相がこういう案件に絡んでいるっていうのは、あんまり見たことないですね。森友にしても、首相の近くの人が絡んでいて政策全体に歪みが生じてるということは、確かに言えます。昔のように露骨にお金が絡んでないというだけですね」
日本の国政のトップにいる人々は、『ガリバー旅行記』の作者、ジョナサン・スウィフトの名言をかみしめるべきではないか。
「ひとつの嘘をつく者は、自分がどんな重荷を背負い込んだのか滅多に気がつかない。つまり、ひとつの嘘をつき通すために別の嘘を20個考えなければならないということを」
(文=深笛義也/ライター)