“みなし残業制度”には現役ハローワーク職員も苦言
しかし、1カ月に24時間の時間外労働が発生したと仮定すると、A社の時給は954円にまで下がり、最低賃金を割り込んでしまう。そして、A社の求人票や公式サイトには時間外労働手当に関する記述が見当たらないため、職務手当2万8000円のなかに、一定時間分の“みなし残業代”が含まれている可能性も考えられる。
特にA社のような職種だと、昨今“IT土方”と揶揄されるように、時間外労働がさらに長引く可能性は否定できないだろう。求人票の記載通り、月に15時間の残業で済むならともかく、仮に30時間残業してもみなし残業として2万8000円までしか支払われないとしたら、時給は922円程度となり問題が出てくる。
こうした低賃金の求人情報や、時間外労働の現状について、ハローワークの窓口担当者に話を聞いた。
「ハローワークの求人情報の中に、賃金が極端に低いものはそこまで多くないというのが私の印象です。求職者も、低賃金の企業をわざわざ選ぼうとはしませんので、おそらく目にも留まらないのではないでしょうか。
その一方で最近、“みなし残業手当”や“固定残業手当”といったものを取り入れる企業が増えてきているように感じています。こういった手当は企業ごとに自由に作れますし、それ自体に違法性はありません。ただ、20時間程度ならまだしも、“30~40時間で○万円”というようなみなし残業手当を設けている企業への応募は、私個人としては避けたほうがいいと思います。
実際の労働時間がみなし残業時間よりも少なかった月なら、手当をもらって得した気分になるでしょう。しかし、長時間の残業が恒常化している企業であれば、決められた手当をただ当たり前に受け取るだけとなってしまい、何も嬉しくないでしょう。しかも、そういった企業は、みなし残業手当を含まない基本給を異常に低く設定しているということもあり得るのです」(某ハローワーク職員)