チケキャン閉鎖問題をめぐる誤解
さて、チケキャンが問われた罪は、「詐欺」と「商標法違反」だ。一部で誤解されているが、チケットの高額転売が直接、罪に問われているわけではない。実は、高額転売を直接的に罪に問える法律が存在しないのである。
では、これまではどうだったのか。反社会的勢力の関係者が生業としていたダフ屋は、地方自治体の迷惑防止条例で取り締まりが行われていた。しかし、今やチケット転売ビジネスの本流はネットに移った。そして、2019年にはラグビーのワールドカップが日本で開催され、2020年には東京オリンピックの開催を控えているにもかかわらず、チケット転売を規制する法律はないという状況に直面しているのだ。
前述したように、ダフ屋については迷惑防止条例が適用される。また、金券ショップは都道府県の公安委員会から古物商の営業許可を取得しているが、無許可営業で摘発されるケースもある。また、高額転売を目的にチケットを購入し転売を行ったケースは、詐欺行為とされた事例もある。
しかし、絵画や陶芸などは転売されることによって価値が高まっていく。一方、高額でも入手したいと思う人々の欲求を規制することはできない。
不当に高額でチケットを転売し利益を得る業者がいることに対して、イベント主催者側は頭を悩ませている。東京都職員は語る。
「超党派のスポーツ議員連盟に対し、チケット高額転売を制限する規制をつくるように求めている。法規制だけではなく、電子チケットのような技術も含めて、高額転売ができないような仕組みづくりを進めていく」
実は、2012年にロンドンオリンピックを開催した英国も、同様の悩みを抱えた。英国は「ロンドンオリンピック・パラリンピック法」によりチケットの転売に規制を課した。大会組織委員会から正式な権限が与えられた場合を除き、チケットの販売等を公共の場所または事業として行うことを禁止した。そして、違反者には罰金刑を科した。それでも、水面下ではチケットの転売は行われた。
東京オリンピックの開催までは2年しかない。この間に、有効なダフ屋・チケット転売対策は取れるのだろうか。法規制の網はかかるのか。そして、チケット転売業者と取り締まる側のイタチゴッコに終止符は打たれるのだろうか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)