日本で加速するロボット活用の動き
日本の強みはいくつも指摘される。
第一は、これまで培ってきたモノづくりのノウハウ。少子高齢化の影響を世界で最も早く経験している日本においては、労働生産性を高めるためにも「匠の技」をロボットに学習、体得させることが期待されている。2020年には大企業で25%、中小企業でも10%の仕事をロボットに委ねる計画が打ち出されているほどである。
第二は、サービスの向上にロボットを活かす発想にほかならない。食品分野では2020年を目標にピッキング、仕分け、検品にかかわるロボットの普及率を30%まで高めるのが目標となっている。また、介護ロボットに対する期待は急速に高まっており、2020年にはこの分野でのロボットの市場は500億円に拡大することが見込まれているほどだ。トヨタ自動車が注目しているのもうなずけよう。
第三は、インフラ、災害対応、建設、農林水産業の分野である。就業者数が減少し、高齢化の波もあり、深刻な労働力不足に陥っているわが国にとって、特に、こうした分野でのロボット労働力の導入は、待ったなしの課題といえよう。政府の開発資金を活用し、新たなロボットを20種類以上導入する計画が着々と進んでいる。
民間サイドでの動きも急展開を見せている。その旗振り役を果たしているのが、ソフトバンクが開発した、ヒューマノイドロボットの「Pepper(ペッパー)」であろう。愛嬌のある感情表現やコミュニケーション能力で人気を博しているのはご承知の通り。同社の孫正義会長によれば、「今後30年以内にIQ1万を超えるロボットが登場するに違いない」という。平均的人間のIQは100で、天才といわれる人で200。そんな人間社会にIQ1万を超えるロボットが登場すれば、社会は前代未聞の大変革を経験することになるはず。蒸気機関車やインターネットの比ではないだろう。
孫氏に言わせれば、「人間が開発したツールが人間を超える、という人類未踏の世界が目前に迫っている」というわけだ。そうなれば、まさに「シンギュラリティの到来」となり、あらゆる分野でロボットと人間が共存する生き方が求められることになるに違いない。果たして、日本人が世界に先駆けてロボットと共生するライフスタイルを実現できるようになるのだろうか。