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片田珠美「精神科女医のたわごと」

【仙台警官刺殺】相沢容疑者、「警官による自殺」か…6月の富山・警官刺殺事件に触発された可能性

文=片田珠美/精神科医
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 この定義に沿って「警官による自殺」の発生頻度を調べた研究結果が報告されている。「警官による自殺」の統計的研究を最初に行ったハトソンは、1987年から1997年までの間にロサンゼルスで発生した警官の発砲事件、437例を詳細に調べた結果、全体の11%が「警官による自殺」だったと報告している。なお、最後の年の1997年に限れば、「警官による自殺」は25%を占めており、増える傾向にあると指摘している。

 ケネディも、1980年から1995年までの間に全米の新聞に掲載された警官の発砲事件、240例を詳細に分析し、そのうち16%(37例)が自殺願望を抱いていた疑いがあり、「警官による自殺」とみなされると述べている。

 その後、モハンディは、1998年から2006年までの間にアメリカとカナダで発生した警官による発砲事件、707例を詳細に調べた結果、全体の36%(256例)が「警官による自殺」だったと報告している。

 研究対象になった年代や地域によって差があるにせよ、だいたい警官の発砲事件の10~30%を「警官による自殺」が占めており、しかも年々増える傾向にあるようだ。

「警官による自殺」に走りやすい人の特徴

 数多くの報告や研究から、「警官による自殺」に走りやすい人の特徴が浮かび上がってくる。まず、さまざまな問題に対処するのに、しばしば他人への攻撃や暴力を用いる。また、抑うつ気分や絶望感から自殺願望を抱いており、社会への復讐願望も非常に強い。

 復讐願望が強いのは、これまでの人生で、自分だけが不当な扱いを受けたとか、理不尽な目に遭ったとか思い込んでおり、被害者意識が強いからだろう。そういう仕打ちを自分にしてきた人々に罰を与えたいと願っているが、その手段がなかなか見つからないので、怒りと欲求不満を募らせている。

 一方、自殺は受け入れがたい死に方だと思っていることが多い。もちろん、欧米ではキリスト教の影響が強いことにもよるのだろうが、それだけではない。ただ自殺するだけだったら人生の敗北者としてこの世を去ることになるが、何か事件を起こして警察に射殺されれば、“公権力の被害者”として人生を終えられるし、最後に打ち上げ花火も上げられるという思惑もあるようだ。

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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