「階級社会」イギリスの貧富の格差がすさまじいことに…排除される「アンダークラス」
「分断」という言葉は、今の世界を表現する上でもっともホットなトピックだろう。2016年の2つの象徴的な出来事――アメリカにおける大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選したこと、そしてイギリスが国民投票によってヨーロッパ連合(EU)から離脱を決めたこと――は、世界で起きている「分断」を私たちにまざまざと見せつけた。
しかし、日本にいる限りは、世界の「分断」がいったいどこまで進んでいるのか見えにくい部分があるだろう。世界中を渡り歩き、その社会の変化を見つめている高城剛氏は、『分断した世界』(集英社)でアメリカやEUの「分断」の姿を丁寧にレポートしている。
本連載「ここまで世界は『分断』していた」では、4回にわたってアメリカとEUにおける「分断」の姿を、本書からご紹介していく。第3回は、EU離脱という大きな決断を下したイギリスの分断の姿に迫る。
見て見ぬふりをされてきた「イギリス内の分断」
2010年1月27日、イギリス政府から、国内における貧富の格差が「第二次世界大戦以降最大になっている」という報告書が発表された。
その格差はすさまじいものだ。人口の10%の富裕層の平均資産は85万3000ポンド以上。これは、最貧層10%の財産である8800ポンド以下の100倍近くにあたる。さらに、上位1%のいわゆる「スーパーリッチ層」となると、その規模はさらに大きくなる。スーパーリッチ層100人当たりの資産の総計が、なんと最下層1800万人(イギリスの人口の30%)の資産の総計と同じ金額になるという。
この「差」は、実は今に始まったことではない。高城氏によると、イギリスには階級制度が存在しており、国民の誰もが意識し、自分の位置を自覚しているという。もちろん、その階級は明文化されてはいない。しかし、イギリスでいくら財を成しても自分の階級を上げることはきわめて難しい。「階級を変えるには3代はかかる」と言われているほどだからだ。
なぜ変えることが難しいのか。それは、この階級が中世から続くものだからである。王族や聖職者、貴族などの特権階級と庶民の二極化が歴史的に続いてきた。また、「庶民階級のなかでも階級が分かれている」と高城氏は指摘しており、貧困家庭に生まれた子どもは教育機会や職業選択においても、不平等というハードルが常に立ちはだかっている状況なのだ。
排除される「アンダークラス」
EU離脱を選択したイギリス国民。その彼らの声のひとつに「移民に仕事を奪われる」というものがある。この問題も非常に根深いものがある。
高城氏が背景として挙げるのが、1980年代以降にイギリスの若年失業者のなかに出てきた「アンダークラス」だ。「アンダークラス」は義務教育課程からドロップアウトした人たちのことで、読解力や思考力が低く、社会保障制度にぶら下がり続けている。さらに、両親が失業していることが多く、自らも失業しやすいという世代間継承をしている。
『分断した世界』 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ……世界はさらに「壁」で隔てられ壊れていく。分断最前線で見た、世界が直面する真実! 終焉を迎えたグローバリズム。世界はさらに崩壊していくのか? 著者・高城剛が自らの目と耳で分断の現場を徹底ルポ!