さらに、17年の9月28日解散、10月22日投開票の衆院選では、すでに消費税増税が19年10月に先送りされているので消費税が選挙戦の障害とはならず、安倍政権は再び圧勝しました。
こうして見ると、安倍政権のこれまでの国政選挙の常套手段は「消費税増税先送り」というサプライズカードだったことがわかります。だとすれば、来年の2つの大きな選挙でも、ヒト・モノ・カネ・圧力が効かなくなるなか、このサプライズカードを使わずに安倍政権が負けるというシナリオは考えにくいでしょう。
弱体化した財務省の涙ぐましい努力
実は、歴代首相が使わなかった「消費税増税先送り」というカードを安倍首相だけが使うことができたのには、理由があります。それは、安倍首相だけが財務省とのしがらみがない珍しい首相だったからです。
大平元首相は、大蔵省出身。竹下元首相、橋本元首相、野田元首相は、そろって大蔵・財務大臣出身。一方、安倍首相は財務省にはなんの義理もないので、選挙のために「消費税増税先送り」のカードを切ることに、ためらいも抵抗もないのでしょう。ちなみに、消費税が17年間も引き上げられずにいたのは、その間に財務省の力が弱まっていたからです。
大蔵省の時代、同省は「官僚の中のキング」と言われ、絶大な権力を持っていました。しかし、1998年に大蔵省を舞台とした汚職事件、俗にいう「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」が発覚します。そして、2001年の省庁再編で大蔵省は解体されて財務省となり、金融行政は内閣府の外局として新たに設立された金融庁に移されました。
その結果、「官僚の中のキング」と言われた旧大蔵省の力は著しく削ぎ落とされたのです。時を同じくして首相の座に就いた小泉純一郎元首相は、大蔵省と手を組んで消費税にかかわった首相がことごとく失墜していることを知っていたので、さっさと「任期中は消費税を上げない」と宣言し、増税から逃げてしまいました。
今、財務省は、安倍首相になんとか消費税を上げさせようと躍起です。そのため、公文書の改ざんまでして涙ぐましい努力をしていたことは、本連載でも『森友文書改ざん、裏に財務省の消費増税延期阻止への「執念」』『【森友】財務省、文書改ざんしてまで「安倍昭恵氏の関与」を隠蔽したかった理由』で指摘しています。
いずれにせよ、安倍首相に弱い財務省が、「消費税増税先送り」のカードで政権基盤を強化してきた安倍首相の気持ちを増税に傾けることは、まず難しいでしょう。
残り2つの理由については、次回以降に見ていきたいと思います。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)
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