新図書館を目玉とした和歌山市駅前再開発プロジェクトには、少なくとも64億円もの補助金が投入される見込み。その半分の32億円は国から交付される。和歌山市駅前の再開発は、16年に国交省が管轄する社会資本総合整備計画事業に認定されていることからすれば、巨額の補助金獲得に国交省出身の皆川氏が少なからぬ役割を果たしたと考えるのが自然だ。
和歌山市長と和歌山県県土整備部のつながり
2番目のポイントは、国の補助金と結び付いた政治との関係である。
武雄市の視察に、和歌山市から参加した4名の顔触れをみると、こちらにもキーマンがひとりいた。和歌山市都市計画部の「部長級」とされている中西達彦氏である。同氏について、ある自治体関係者はこう話す。
「中西さんは県庁から市の都市整備課に人事交流で来た専門技官です。確か、16年には県庁に戻って県土整備部の都市住宅局長になっているはずです」
都市住宅局といえば、前出の皆川氏がいた部署である。14年8月に市長に当選した尾花正啓氏の古巣が県土整備部だったことを考えれば、中西氏は市長が古巣から連れてきた「懐刀」という見方もできるかもしれない。
ちなみに、尾花市長の後任として県土整備部長になった石原康弘氏も、皆川氏と同じく国交省から人事交流で和歌山県庁に来ていたが、皆川氏と同じタイミングで本省に帰任している。さらに、皆川氏の県庁での後任も国交省から来た若手キャリアだ。
2人のキーマンから浮かび上がるのは、総事業費123億円におよぶ和歌山市駅再開発の計画を主導していたのは、国交省だったのではないかという疑問である。
国交省関係者は、人事交流についてこう話す。
「市のレベルでは(国交省との人事交流は)あまりありませんが、県庁なら双方向であります。国交省は現場を知らない人物では務まらないし、逆に自治体は制度を知らないといけない。そのため、双方向からの交流は有意義です。補助金の制度も頻繁に改定されているので、そこをサポートする意味でも、国からの派遣は重宝されるのではないでしょうか」
国の補助金を上手にひっぱってくるためには、国交省キャリアの力は欠かせないということなのだろうか。ある図書館関係者は、逆の立場から、国と自治体との関係をこう解き明かす。
「国が推進するコンパクトシティ計画(都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画)が着々と進んでいます。もともと図書館は集客能力が高く、地方ではこれを入れた立地計画があちこちで進められました。図書館を目玉にした国交省・県と建設設計業者のかかわり、さらには図書館を指定管理にすることで指定管理業者とのかかわりが生まれ、地元の業者や役所の双方が甘い汁を吸う構造だと思います。
私がいた自治体でも、土木部長は国からの出向でした。大きな都市のほとんどが同様の構造になっていると思います。建設に限らず、国はそのようなかたちで内側から自治体を支配しているように考えられます」