司法試験を法科大学院在学中に受験できるようにする、という話が出ている。10月5日付読売新聞で報じられたのを機に、弁護士などがツイッター上でこのことについて議論している。
司法試験制度改革の概要としては、これ以外にも法学部と法科大学院を一貫教育にして5年で修了できる「法曹コース」の導入、進級のための「共通到達度確認試験」の導入、司法試験の時期を現在の5月より遅らせ、司法修習開始時期を11月から4月に変更するといった内容が報じられている。
現状の法曹養成制度の問題点は何か
鳴り物入りで2004年4月に創設された法科大学院制度。多様なバックグラウンドを持った人を法科大学院に入学させ、「プロセスとしての法曹養成」を掲げ、理想の法律家養成を大学が行おうとした。当時は、法学をまったく学んだことがない人でも、適性試験や小論文、ステートメント(就職活動におけるエントリーシートのようなもの)、面接で合格できるという方針が示され、司法試験予備校では「未修者コース」の講座に力を入れ、多くの人に法曹界入りという夢を見させた。
だが、法科大学院が乱立し、未修者コース3年を終えても司法試験に合格できるだけの力はつきにくく、合格率も悪かったことでこのコースの人気はなくなっていった。それだけではなく、合格者数の少なかった法科大学院は次々と閉校していき、未修者からの志望者はほとんどいなくなってしまった。
法科大学院は、既習者を対象に志願者を募集するようになり、そこには多くの法学部出身者が大卒後ストレートで入るようになり、多様性どころか画一性が目立つようになった。バックグラウンドの多様性を理念とした法科大学院の初期の理想像は消え、大学法学部出身者ばかりが法科大学院に入るようになり、よりいっそう法曹職につく人物は定型化されていった。
旧司法試験も、11年度まで(ただし最後の年は口述試験の再試験のみ)行われて経過措置が取られたものの、法科大学院在学中の人が旧司法試験を受けることが目立ち、法科大学院と新司法試験の理念がないがしろにされるような行動が目立った。
11年度からは司法試験予備試験が開始。旧司法試験よりさらに科目が増え、そのうえ予備試験受験後1年後以降に司法試験を受けるというサブルートもできた。法科大学院を修了して司法試験を受ける人よりも、予備試験を受けて司法試験を受けた人のほうが合格率は高い(18年は78%。法科大学院修了者は25%)という状況にもなっている。