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百田尚樹氏『日本国紀』、「太平洋戦争は米国と中国に一方的に原因」は自己満足にすぎない

文=八幡和郎/評論家、歴史作家
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 戦争の原因について私は、大正になって中国での辛亥革命とアジア諸民族の覚醒、第一次世界大戦、アメリカの国力充実と日本移民排斥、日本での政党内閣の確立と薩長閥の衰退など、いろんな動きが複合的に影響し合って、日米蜜月というわけにはいかなくなったというもので、アメリカや中国に一方的に原因があるとは思わない。

 百田氏は「満洲は中華民国のものか」として、満洲は「孫文の一方的な宣言」だけで中国の領土になったという認識で、チベットやウイグル、モンゴルについても同様だ。しかし、国際法的にそれは無理だ。

 百田氏は、「中国がずるかった」「アメリカが日本を戦争に引きずり込んだ」という点を強調されるのだが、私は中国の外交のほうが日本より一枚上手だったというだけだと思う。

 アメリカに戦争に引きずり込まれたという面があることは否定しないが、それが日本を正当化できる理由にはならないと思う。一般社会でも、挑発にのって暴力をふるった場合に、挑発を責めるなんて情状酌量の理由にしかならない。

 沖縄戦について、私は終戦に向かっての意思決定の時間稼ぎのために沖縄が犠牲になったことを重視しているが、百田氏は沖縄防衛のために日本軍が全力をあげたという面を強調される。

戦後体制は押しつけか、妥協の産物か

 戦後については、いわゆる保守派らしい主張が快調に展開されている。「憲法改正を強いたアメリカはけしからん」「東京裁判は容認できない」「公職追放も許せない」「レッドパージは形ばかりでバランスが取れない」「農地改革も悪いことばかりではないが、弊害も大きかった」「社会主義がダメなことは自明の理になったのに、まだ、擁護している人がいる」「靖國、教科書、南京、慰安婦など、いわれなき批判をされて悔しい」といった具合だ。

 私は、憲法改正にしても東京裁判にしても、押しつけられたというよりはアメリカとの取引の結果だから仕方ないという意見だ。

 憲法については、押しつけであるか議論するのは、あまり意味のないことだ。東久邇宮内閣で近衛文麿が改定作業に入っているのだから、占領下の改正は当然のことと受け止められていた。

 東京裁判もそうだが、国体を守り、昭和天皇への訴追を回避するためには、やむをえないと了解していた。昭和天皇も内容を了解され、祝賀行事にも進んで出席されている。むしろ、昭和天皇は旧憲法との連続性を強調されている。

 ただし、アメリカ側が原案をつくったことを隠したのは大きな傷だし、両院の3分の2ずつと国民投票という高いハードルを定めたことは、将来の世代への不当な拘束であって、護憲派が衆参両院いずれかの3分の1を確保して改憲を阻止していることだけで、現在の憲法には日本国民の意思で制定し守られていると“曇りなき正統性”を主張するのも無理な主張だというのが、私が公平だと思う歴史観だ。
(文=八幡和郎/評論家、歴史作家)

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