オーナーに対する補償としては、対象となった物件の改修とその費用を同社が負担する。当然といえば当然だ。通常なら、改修中の賃料や退去後新たな入居者が入るまでの賃料が補償の対象となるが、同社の場合、一括借り上げによる家賃保証(サブリース)を行っているので、そのまま契約通り賃料をオーナーに支払うことで、賃料については補償(保証)される。そのため、同社が倒産など経営破綻さえしなければ、オーナーは賃料を支払ってもらうことができる。この点を踏まえれば、上記の記事でオーナーの会が同社を倒産させないよう求めたことは理解できる。同社が倒れれば、オーナー(特にローンを抱えるオーナー)も共倒れとなってしまう。その場合は、同社のオーナー数は何万人もおり、先の「かぼちゃの馬車問題」でローンの支払いが困難になったオーナー数の比ではない。こう考えれば、多くの金融機関にとっても対岸の火事ではない。
また、オーナーにとっては、賃料が保証されればよいというものでもない。この問題が発覚したことからブランドイメージが傷つき、アパートを売却する際などは売却しづらくなった。つまり、資産価値が下がったのである。こうした資産の減価については、どう責任を取ることができるのだろう。投資という観点からみれば、こうしたことも自己責任の範疇になる(レオパレスを選択したことが自己責任)かもしれないが、今回のようなケースは、やはり選んでもらった同社がオーナーに対してなんらかの補償をしてもいいように思う。
「長期一括借り上げ」制度の問題点
最後に、筆者はまだ気になることがあるので、記しておきたい。
今回の国土交通省の対処は、違法建築物を見つけ、健全な建物に改修することで入居者の身体的な安全、心理的な安心を確保する意味では重要なものだと思うが、果たして物理的な改善だけでいいのだろうか。
根本的には、やはり「長期一括借り上げ」「30年家賃保証」という仕組みに問題があるのではないかと考えている。オーナーにアパート経営(建設費のローン返済、入居者が入らないなど)の不安を和らげ、決断する重要な仕組みだが、その支払いをする企業側にしてみれば、一連のリスクを引き受けるものとなる。以前にも別の記事で書いたが、企業側はその原資を「建築費」の名目で先取りしている。その原資をできるだけ確保する意味でも、建築費は抑えたい。それが、今回の問題につながってくる。そもそも、人口減に伴い賃貸住宅の数がすでに飽和状態にあり、賃貸経営は一部の地域を除いて数年先でもどうなるかわからない。そうしたなかで、30年などの長期の家賃保証というものに何のガイドラインもないのはおかしいのではないか。
今回の問題を受けて国交省には、この点にもメスを入れてほしいものだ。
3月18日、国交省が報告を求めた「1カ月」の期限が到来する。果たして、同社の“中間報告”はどんな内容なのか。さまざまな視点で注意深く見守るべき報告になる。
(文=小林紘士/不動産ジャーナリスト)