統一地方選挙の後半である市区町村の長および議員の選挙運動が始まった。
立候補者数が限られる前半戦(知事選挙など)と異なり、大勢の候補者が立候補する後半戦は1票2票が当選を左右するため、各陣営とも熾烈な戦いを繰り広げる。特に都市部の選挙戦は定数40人前後に60人以上が立候補することもあり、激戦となりやすいが、選挙運動の手法は次の3つに大別できる。
・ポスターやSNS戦略に力を入れる浮動票狙いの新人候補
・昔ながらに支援者や支援団体を駆け回る地元候補
・組織力で票を計算する政党候補
そんな中、昔ながらの選挙カー運動に力を入れる某都市部の候補者・A氏(当選5回)に、今回の選挙戦について聞いてみた。
結婚式はプラス1票、葬式はマイナス1票
「僕らの世界では、結婚式(への出席)はプラスで、葬式(への出席)はマイナスと考える」とA氏は語る。この場合のプラスマイナスとは、「票」のことだ。A氏の場合、約20名の支援者があの世へ旅立ったほか、支援者の選挙区外への引っ越しも多く、友人知人への依頼票を見越しても「前回よりも50票は減りそうだ」と計算しているという。
「僕の支援者は高齢者が中心で、ツイッターやフェイスブックで政治活動を報告しても誰も見てくれないから、どうしてもリーフレットに頼る」(A氏)
とはいえ、当選を5回も重ねているA氏は新人のように1万枚も2万枚も撒いたりはしない。2500票で受かると見越しているため、倍の5000枚を用意し、支援者に手渡しで配っていくそうだ。
選挙カーを走らせる意外な目的とは
6回目の当選を目指すA氏は、基本的には前回と同じく選挙カーを中心に活動を行うが、実は選挙カーは票の獲得にはつながらない。むしろ、一般市民にとっては“騒音”でしかないかもしれない。
「でも、マイナスにはならないんだ。もっと言えば、マイナスを減らすという考えが選挙カーにはあるんだよ。僕の支援者には、選挙カーで回ると家から出て手を振ってくれる人が少なくない。『がんばってねー』などの声援に『ありがとう! 息子さんは元気?』などと答えることで、その支援者は1票を入れてくれるが、もし回らなければ『今回は全然活動してないわね』などとなりかねない。票を減らさないための選挙カーなんだ」(同)
A氏の選挙区は、「北部」「中央部」「南部」に分けられる。北部とは山側、中央部はターミナル駅周辺、南部とは海側だ。
「僕は地盤の中央部に時間をかけるね。北部にも支援者がいるので選挙カーを出すけど、南部にはほとんどいないので、中心部から北部を回るのがメインになる。ただ、今回はクルマではなく自転車での遊説を多くするつもりだよ。幸い、まだ体は元気だからね」と、還暦前の健康体をフルに使うそうだ。
「選挙カーでは、手を振るけど言葉を交わす時間がないでしょ。その点、自転車なら握手もできるし、支援者と少しでも会話ができる。僕の支援者はブレないけど、あらためて確認の意味で『お願いします』と頭を下げる。この際の会話が重要なので、前回よりも自転車での遊説を多くする予定だよ。体力維持にも結びつくし、一石二鳥。敵は雨だけだね」(同)