日本大学アメリカンフットボール部の選手による危険極まりないタックルで、関西学院大学の選手に大けがをさせた問題から5月6日で1年が経過した。タックルをした選手が内田正人前監督と井上奨前コーチの指示があったと会見で証言したが、大学と当事者らは否定。その後設置された第三者委員会が、タックルは監督とコーチの指示によるものだと認定した。
しかし、1年が経過した現在まで、日大の法人トップである田中英壽理事長は、会見にも姿を見せず、一度も公の場で説明していない。教育機関であるはずの大学として、疑念がもたれている状況が続いている。
日大の元副総長らで構成する「新しい日本大学をつくる会」は5月7日、「大学が危機的な状況に陥っている」として、田中理事長と理事の責任を追及するため、つくる会の主導で近く刑事告発と民事訴訟を起こすことを明らかにした。つくる会の主張を聞いた。
入試の志願者大幅減と私学助成金カット
5月7日、「新しい日本大学をつくる会(以下、つくる会)」の役員6人が文部科学省で記者会見した。6人のうち4人は副総長経験者。他の2人は元法科大学院研究科長と元法学部教授だ。元副総長でつくる会の会長を務める牧野富夫氏は、冒頭でこう切り出した。
「第三者委員会が報告を出しましたが、日大自体は現在まで何も改善されていません。そればかりか、入学志願者が大幅に減り、私学助成金が35%カットされるなど、かえって事態は深刻になっています。にもかかわらず、法人トップの田中理事長は責任を取ることなく、さまざまな問題に対して説明責任も果たしていません」
日大アメフト部の危険タックル問題の影響は、牧野氏が指摘するように、今年に入って改めて表面化した。一つは今年の入試。夜間部と短大部を除く、16学部の一般入試の志願者は9万9972人と昨年よりも1万4344人減少したのだ。私立大学全体の志願者が前年よりも4%以上増加したなかで、日大は12.5%も志願者を減らしている。危険タックル問題によるイメージダウンが原因なのは間違いないだろう。
もう一つは私学助成金の減額。日本私立学校振興・共済事業団は今年1月、日大に対して2018年度の私学助成金を35%カットすることを決めた。金額にして約32億円の減額だ。危険タックル問題への対応に加えて、過去3年間に卒業生の子どもを優先的に追加合格させていたとする医学部の不正入試も、助成金カットの大きな理由になっている。