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「プーチンはホロコーストの歴史を流用」 ロシア、ウクライナで民族浄化を行う懸念も

文=Business Journal編集部
プーチン大統領の演説に対する抗議声明を発表したホロコースト記念博物館公式サイト
プーチン大統領の演説に対する抗議声明を発表したホロコースト記念博物館公式サイト

 アメリカ合衆国ホロコースト記念博物館は24日(現地時間)、ロシアのウクライナ侵攻と同国のウラジーミル・プーチン大統領の軍事作戦実施表明演説に対して抗議声明を発表した。

「プーチンはホロコーストを違法な戦争のために流用した」

 抗議声明によると、同博物館はロシアによるウクライナへの攻撃を「Russia’s outrageous attack」(違法な攻撃)としたうえで、強く非難。「民間人への影響と人命の損失を深く懸念している」と述べた。その上で、以下のようにプーチン氏の演説に関して問題点を指摘している。

「In justifying this attack, Vladimir Putin has misrepresented and misappropriated Holocaust history by claiming falsely that democratic Ukraine needs to be “denazified.” Equally groundless and egregious are his claims that Ukrainian authorities are committing “genocide” as a justification for the invasion of Ukraine.」

「この攻撃を正当化するにあたり、プーチン大統領は民主的なウクライナを『非ナチ化』する必要があると誤って主張することにより、ホロコーストの歴史を誤って伝え、流用した。同様にウクライナ当局が『ジェノサイド』を犯しているという彼の主張は根拠がなく、ひどい」

 そのうえで、同博物館館長で、ジミー・カーター大統領政権時に国内政策大統領補佐官を務めたスチュアート・アイゼンスタット氏の声明を以下のように掲載した。

「We strongly condemn this unprovoked attack and are greatly concerned about the loss of life. The Museum stands with the Ukrainian people, including the thousands of Holocaust survivors still living in the country,These survivors are remnants of one of Europe’s largest pre-war Jewish populations that was almost completely decimated by the Germans in World War II. Having suffered terribly as victims of both Nazism and Communism, Ukrainians today are seeking to fulfill their democratic aspirations.」

「私たちは、(ウクライナからの)挑発を受けずに行った攻撃を強く非難し、人命の損失を大いに懸念しています。博物館は、まだ国内に住んでいる何千人ものホロコースト生還者を含むウクライナの人々のそばに立っています。

 ホロコーストの生存者は、第二次世界大戦でドイツ人によってほぼ完全に破壊された、ヨーロッパで最大の戦前のユダヤ人集団のひとつです。ナチズムと共産主義の両方の犠牲者としてひどく苦しんできたウクライナ人は、今日、民主的な願望を実現しようとしています」

 また同博物館は、第二次世界大戦中の1941年6月、ナチスドイツがヨーロッパ東部でバルバロッサ作戦を展開した際、ナチの移動殺人部隊(アインザッツグルッペン)などが、100万人をはるかに超えるウクライナ系ユダヤ人を含む、ユダヤ人の男性、女性、子供を組織的に殺害した歴史を説明。ホロコースト中の最大の銃乱射事件の1つとして知られるキエフ郊外のバビヤールの峡谷虐殺事件にも触れ、この事件でドイツ人とその協力者が33000人以上のユダヤ人を殺害したと述べた。また第二次世界大戦中、多くの非ユダヤ系ウクライナ人も命を落とし、ナチスによる残忍な強制労働にさらされたと述べ、ホロコーストの歴史に深い影を落とすウクライナでのロシアによる戦闘行動に対し、憂慮を示した。

 国連経済社会理事会のオブザーバー資格を持つ米NGO関係者は「ロシアがどの口でホロコーストやナチズムやジェノサイドを語るのか。怒りで震えます。ロシア軍はかつてのボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争の際、セルビア人勢力による他民族への“民族浄化”と呼ばれる非人道的な行為を黙認、支援した疑惑が残っています。ウクライナのロシア軍占領地域で、親ロシア派などによって同様の行為が行われるのではないかとの懸念が少なからずある」と述べた。

チェルノブイリ原発、ロシア軍が掌握

 ウクライナ大統領府は25日(日本時間)、ロシア軍が首都キエフ北方のチェルノブイリ原子力発電所を掌握したと明らかにした。ロイター通信やCNNなどによると、同国のポドリャク大統領顧問は「ロシアによる全く無意味な攻撃を受け、チェルノブイリ原子力発電所が安全と断言するのは不可能」「欧州における最も深刻な脅威の一つだ」と述べたという。

 当編集部では22日、チェルノブイリ原発を含む同国内の原発が戦闘地域になることを懸念し、記事『ウクライナ侵攻ならチェルノブイリ原発が戦闘地域化の懸念…人類史上初、欧州に危険も』を公開していた。ロシア軍占領下の原発やウクライナ国民の安否が気づかわれる。

(文=Business Journal編集部)

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