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治療の継続が必要
もっとも、被害妄想を抱いているからといって、みながみな凶行に走るわけではない。きちんと治療を受けていれば、むしろおとなしい方が多い。だが、なかには、自分が病気だという自覚、つまり「病識」がなく、治療を受けていない方がいる。
これは、ある意味では当然かもしれない。というのも、妄想は、その定義上、現実離れした内容でも、本人が真実だと確信していて、訂正不能なものだからだ。本人が真実だと確信している以上、自分が病気であることを認めようとしない。当然、治療も受けようとしない。
飯森容疑者は、精神障害の障害者手帳を所持していたので、過去に精神科できちんと治療を受け、診断書も書いてもらっていたはずだ。だが、昨年11月から都内のゴルフ練習場で清掃のアルバイトとして勤務していたということなので、しばらくの間病状が安定していたことに安心し、通院と服薬を自己判断でやめてしまった可能性も考えられる。その結果、病気が再発して、幻覚や妄想などの症状が出てきたため、今月12日から欠勤していたのかもしれない。
誰だって、自分が病気であることを認めたくないし、薬も飲みたくない。だが、一時的に病状が安定したからといって、勝手に通院と服薬をやめてしまうと、症状が再燃する恐れがある。やはり、「病識」を持って、治療を継続することが必要だろう。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
片田珠美『無差別殺人の精神分析』新潮選書 2009年
筑波昭『津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇』新潮文庫 2005年
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