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アベノミクス、消費増税で好況のウソ〜悪化進む消費、破綻できない資産“超過”日本

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 そういう国は日本だけですよ。アメリカ国債保有者の50%が外国人です。だから、その外国人が「もうアメリカ国債はいらない」と言ったら、アメリカ経済は破綻するかもしれませんね。日本国債が危なくなり、本当に財政が危険になるというケースは、大半の日本人が日本人であることをやめ、日本から出ていくときくらいです。

 また、財務省は消費増税を進めるために、「GDPに対する債務比率が高まれば、財政破綻の可能性も高まる」という説明をしていますが、債務比率と財政破綻リスクの間に相関関係はありません。韓国、タイ、ロシア、アルゼンチンなどが倒産した時のGDPに対する債務比率は、50%程度でした。こうした国々に共通しているのは、対外借入比率が高く50%以上だった点です。ちなみに日本は、限りなくゼロに近い。

 日銀は統計をとる際に、国の経済主体を、政府、金融機関、非金融法人企業、家計、NPO(民間非営利団体)の5つに分類しています。そういう観点から、日本という国のバランスシートを調べると、資産は5615兆円、負債は5353兆円。つまり、日本は260兆円の“資産超過”です。財務省は、民間部門を無視して、「日本は債務超過だ」とあおっているわけです。

 世界中で、民間部門も加えて資産超過の国は日本だけです。世界で唯一の資産超過の国が倒産するというのであれば、債務超過の国のほうが先に倒産するはずです。財務省は財政の危機をあおることで増税をしたいので、こうした単純な議論をわざとしない。もし議論したら、「増税しなくてもいい」ということになりかねないですからね。

–財務省が消費税増税をしたい真の理由は、なんなのでしょうか?

山口 いろいろな説がありますが、私は課税所得の捕捉率の問題ではないかと思います。捕捉率というのは、税務署が所得額をどれくらい把握しているかを表すもので、サラリーマンは源泉徴収なので捕捉率は10割、自営業者は5割、農業、林業、水産業従事者は3割といわれています。これから団塊の世代が定年を迎え、サラリーマン生活から年金生活に移っていくと、それまで100%捕捉できていた課税所得がだんだんと捕捉できなくなる。それに危機感を抱いた財務省は、確実に税収を確保できる消費税引き上げを考えたのではないでしょうか。

●日本企業生き残りのカギはガラパゴス?

–最後に、日本企業の現状やこれからの見通しについてお聞きします。日本の製造業は、世界市場において韓国などのライバル勢に負け、かなり厳しいとの見方が強いです。

山口 日本にいると、「日本は、韓国や中国に追いつかれ、落ちぶれる一方だ。アメリカでもソニーよりLG電子のほうが売れている」という話をよく聞きます。でも、状況はまったく違います。コモディティ化した製品でシェアを奪われただけなのです。購入後の商品満足度やクレームの少なさなどのデータを見ると、日本製品が依然としてトップを独占しています。

 それから、コアテクノロジーの蓄積量で、日本企業は圧倒的に優位に立っています。例えば、iPhoneの部品の60%は日本製です。ボーイング787も70%が日本の技術ですよね。つまり、iPhoneもボーイング787も、日本の技術なしにはつくれないわけですよ。日本の強みは、そこにありますよね。だから、汎用品でサムスンと競争する必要はありません。

–本書の中で「ガラパゴスで日本は生き残る」と書かれていますね。

山口 ガラパゴスとは、ある特定の市場向けだけに特化させてしまい、世界市場では使い物にならないという意味で使われています。でも、ルイ・ヴィトンは、一切妥協せず自らのブランドイメージを守り通し、世界市場向けに廉価な鞄や靴を大量に販売しようとはしませんでした。このようなブランドを徹底的に追求するという戦略をガラパゴスだと揶揄するのは、勘違いもはなはだしいと思います。ルイ・ヴィトンを見習って、高価でも世界が欲しがるブランドをつくることが、日本の生き残る道ではないでしょうか。そして、世界中で誰も追いつけそうもない究極のブランドは、日本人の“接客サービス”ではないかと思います。

 日本のサービス産業というのは、まだ世界の競争にさらされた経験が少ない。銀行の窓口業務や、温泉業、旅館業は、まだほとんど世界に出て行っていませんが、その競争力はすごいでしょうね。日本の銀行の窓口で、お釣りを間違えることはありませんからね。アメリカの銀行は普通に間違いますから。「何事も当たり前に正確だ」というところが、日本はすごいですね。

 日本人にとっては当たり前のことが、世界の人々にすごくいいと思われるような時代になってきました。例えば、アニメやオタク文化。別に輸出しようと思ってつくったものではありませんが、たまたま日本人がそういうことをやっていたら、世界が追いついてきたわけですね。

 寿司もそうですね。私が初めてアメリカに行ったのは80年代ですが、そのころ生の魚を食べるといったら、気持ち悪がられました。それが今や寿司ブームで、外国人でも生の魚を食べる人が増えています。

 また、ばかばかしいと思うかもしれませんが、毎朝8時にきちんと会社に来るとか、就業時間外であってもお客様から頼まれた急ぎの仕事があれば終わるまで頑張るというのは、ごく普通の日本人のメンタリティーなのですが、世界的にはそれはきわめて珍しいことなのです。

 だから、日本人であることが競争力の原点なのです。
(構成=編集部)

BusinessJournal編集部

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