また、ザ・リッツ・カールトン大阪でも、実際に使用していない車エビを料理名に冠したり、既製品のパンを自家製パンと称するといった偽装が明らかとなるなど、日本全国の有名ホテルに続々と波紋は広がった。その後、高島屋といった百貨店にまで問題が飛び火したのは周知の通りである。
消費者庁は、景品表示法違反の疑いで立ち入り検査した阪急阪神ホテルズやザ・リッツ・カールトン大阪などについて、罰則付きの再発防止措置命令を出す方向で進めており、年内に処分を決める予定だという。
食品偽装の実態が次々に明るみに出た10月後半〜11月前半にかけては、連日この問題がメディアで取り上げられ、偽装が発覚したホテルや百貨店などに対して強い批判が浴びせられた一方、「根底には飲食業界が抱える構造的な問題があり、個別事例を取り上げて批判するのは建設的ではない」「ある程度は予想がついたことであり、今さら騒ぐ立てるべき問題ではない」などと冷めた意見も見られた。
そんな一連の騒動、そしてメディアやネット上などにおける食品偽装“批判”について、消費者である一般の人々はどのように受け止めているのだろうか? 今回、インターネット調査最大手・マクロミルの協力の下、全国の1000人にアンケートを実施。その調査結果から、人々の本音を探ってみたい。
・調査期間:2013年11月18日(月)~2013年11月19日(火)
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:マクロミルモニター会員 男性500人、女性500人 合計1000人
<調査結果>
Q.相次いで発覚する飲食店や小売店における食品偽装への批判が強まっていますが、あなたはどう思いますか?
1.批判が弱い、もっと批判すべき 12.5%
2.社名や店名を挙げてどんどん批判すべき 35.1%
3.批判はよいが、社名や店名を挙げるのには反対 2.9%
4.メディアや世間は批判し過ぎ 12.7%
5.批判すること自体に反対 0.5%
6.批判の仕方や内容に疑問を感じる 12.6%
7.なんとも思わない 12.4%
8.その他 11.3%
<解説>
「社名や店名を挙げてどんどん批判すべき」と回答したのは3人に1人以上の割合である35.1%という結果で、さらに激しく糾弾してほしいという「批判が弱い、もっと批判すべき」の12.5%を含めると47.6%。半数近い人が偽装が発覚した企業への厳しい追及を望んでいることがわかる。
価格の安さを売りにした飲食チェーン店やスーパーなどではなく、今回の騒動がいずれも高級志向を押し出していたホテルや百貨店から噴出したため、このように激しい論調が主流となっているのだろう。
一方、「メディアや世間は批判し過ぎ」の12.7%と、「批判の仕方や内容に疑問を感じる」の12.6%の合計は25.3%となっているため、約4人に1人はマスコミや世間の糾弾方法を快く思っていないようだ。とはいえ「批判すること自体に反対」と回答した人はわずか0.5%にとどまっているため、大半の人々は今回の食品偽装問題に少なからず憤っているといえよう。
批判の不公正さ、社会の風潮に疑問の声も
では次に、自由回答形式で寄せられた回答者のコメントから、人々の具体的な意見をを見てみよう。
「もともと安い店なら仕方ないが、高いお金を払って行くような店ばかりなので批判されてしかるべき」(30代男性)というように、やはり高級を売りにしたホテルや百貨店で発覚したことを問題視する意見は多数だったが、「意図的と認めていない点が最悪」(30代男性)、「知識不足などと言っているが、知識のない料理人の料理なんて怖くて食べられない」(20代女性)など、会見での企業側の言い逃れとも受け取られかねない不誠実な対応に、不快感を抱いている意見も多かった。
一方、
「偽装の頻度や度合いが無視されていると思う」(20代男性)
「最初だけ批判されすぎ。芋づる式に今なら批判されにくいと思って出てきた店も、最初と同じ、またはそれ以上に批判されるべき」(50代女性)
「自主的に調査して公表した阪急阪神ホテルズは酷く扱われ、そのあと公になった店舗などではそれほど大事にはならなかった。このギャップに疑問がある」(40代男性)
といった意見に代表されるように、同程度の誤表示や偽装を行っていたとしても、報道されたタイミング、公表したタイミングによって、批判にさらされる度合いに大きな違いがあったのは事実。
阪急阪神ホテルズは、出崎弘前社長が10月24日の記者会見で「偽装ではなく、あくまで誤表示でございます」と主張したことに批判が集中したが、確かに真っ先に自主調査した同社ばかりが矢面に立たされていた感は否めない。
また、「社名や店名を挙げるよりも食材のブランド信仰の風潮を批判するほうがいいと思う」(20代女性)といった、そもそもブランド志向が強すぎる日本人の食文化に警鐘を鳴らす声や、「よくない事ではあるが、従業員の事を考えるとリストラにつながらないか心配」(40代女性)というように、批判にさらされた結果、経営が傾き、偽装に関与していない末端の社員やアルバイトスタッフなどの雇用問題に発展してしまうことを懸念する声も見られた。
今回の調査ではさまざまな意見が入り乱れる格好となったが、食品偽装という問題がそれほど複雑かつ根深い問題であるがゆえなのかもしれない。
(文=昌谷大介/A4studio、調査協力=マクロミル)