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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第55回

株式売買価格を固定する“傲慢経営”の巨大新聞社~天然記念物的閉鎖性が堕落を生んだ

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「わしもわかっちょった。だが、裁判で黒白つけんと、株式会社転換以前の株主(もしくは相続人)を納得させられんと判断しよったんじゃ。彼らは株を売りよる気はないんじゃ。年15%の配当を得られるけんのう。相続の評価額が低いに越したことはないけんな」

裁判に勝ったら、自分で自分の首を絞めることになることもわかっていたんですか」

「わかっちょった。わしとしてはじゃな、勝っても負けてもどっちゃでもよかったんじゃ。じゃが、勝ちよった時の秘策は考えちょった。それはもう実行しよったぞ」

「秘策? それは何ですか」

「深井君、お主は新聞業界の研究をしちょるんじゃろう。3年前にうちが会社形態を変えよったのは知っちょるじゃろう。それが秘策じゃわ」

「3年前といえば、国民は純粋持株会社に移行しましたね。そのことですか」

 太郎丸は笑みを浮かべ、頷いた。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

【ご参考:第1部のあらすじ】業界第1位の大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に合併を持ちかけ、基本合意した。二人は両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)に詳細を詰めさせ、発表する段取りを決めた。1年後には断トツの部数トップの巨大新聞社が誕生するのは間違いないところになったわけだが、唯一の気がかり材料は“業界のドン”、太郎丸嘉一が君臨する業界第2位の国民新聞社の反撃だった。合併を目論む大都、日亜両社はジャーナリズムとは無縁な、堕落しきった連中が経営も編集も牛耳っており、御多分に洩れず、松野、村尾、北川、小山の4人ともスキャンダルを抱え、脛に傷持つ身だった。その秘密に一抹の不安があった。

※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。

※次回は、来週12月13日(金)掲載予定です。

BusinessJournal編集部

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