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月給14万円、介護職の募集条件が劣悪すぎると話題…人材不足+高離職率も課題

文=清談社、協力=田中元/介護福祉ジャーナリスト
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介護の現場
「Getty Images」より

 ある求人サイトに公開された介護職の条件が「劣悪すぎる」と、SNSなどで話題にとなった。

「資格不要」「社会保険完備」などと条件が書かれているが、フルタイムで働いても月給が14万円程度というのは、確かにかなりの薄給だ。

 介護業界は、このような条件で募集しても果たして応募はあるのだろうか。また地方においては、この月給というのは一般的なのかもしれない。

 そこで、最近の介護職の待遇や求人について専門家に意見を聞いた。

 少子化の影響で、どの産業においても人手不足が叫ばれているが、特に介護業界は深刻という話はよく耳にする。そんななか、大分県に所在する、ある医療法人の求人広告が話題となった。

「介護職・ヘルパー/病院/資格不要/経験者優遇」
月給13.2万円~14.0万円
時間 1)07:00~16:00 2)11:00~20:00 3)08:30~17:30

 介護関連職は薄給というイメージはあるが、さすがのこの待遇は、現在のものとは思えない。SNSなどでは「計算すると、最低賃金を割っているのでは?」「もはやボランティア」「地方では、この程度の賃金は有りうる」などと、さまざまな意見が飛び交った。

 この労働条件は果たして適正なのか。介護問題に詳しく、『新しい介護記録の書き方・活かし方』『科学的介護を現場で実現する方法』(ぱる出版)などの著書がある、介護福祉ジャーナリストの田中元氏に伺った。

「この求人そのものついては、詳しい仕事内容や実際の勤務体制などがわからないので、なんとも言えない部分がありますが、介護職としてはかなり低い水準だと思います。ただ、地域の最低賃金を割るような待遇だと、厚生労働省から介護事業者に対して指導が入りますから、ギリギリそれをクリアするような賃金設定になっているはずです」(田中氏)

 介護業界は慢性的な人手不足に悩まされている。それを踏まえて、このような待遇や給与水準では、ますます人材が集まらないのではと心配になる。

「介護職において人手不足というのは常態化しています。厚労省の『職業安定業務統計』によると、ホームヘルパーの有効求人倍率は15倍を超えているんです。一般職業紹介状況で有効求人倍率が高い仕事をみると、例えば建設解体業者で9倍くらいです。なので、この15倍というのは異次元の数値だと思います。地方によっては訪問介護や定期巡回などのための人材が集まらず、サービスそのものを提供できないという事態になっているところも出てきています」(同)

 人材を集めるには、何よりも待遇を良くすることが最善策だが、それもなかなか進まない状況のようだ。

「去年10月から政府が各企業のベースアップを目的とした報奨上の加算を設けていて、介護業界も確かに基本給+基本手当がプラス1万円ほど上昇して平均基本給等は24万円になっています。でも、この物価高を背景にベースアップは各業界が行っていて、賃金構造基本統計調査の令和4年調査結果によると2021年から2022年にかけては1.4%上昇、平均基本給等が31万1000円です。それと比べて介護職の平均給与は7万円ほど低いということになります」(同)

 給料のベースアップがわずかに進んでも、元から賃金が低いので厳しいということだ。そこで、業界全体として給与を上げるようにする取り組みが始まっているという。

「経営状況を見える化して、処遇改善に繋げるという話になっていて、来年から全ての介護事業者に対して財務諸表を都道府県に提出することを義務化すると発表されました。そのデータを基に介護事業経営のデータベース化を図ろうとしているわけですが、すでに政府内では利益や内部留保を給与に充てるという方向性が強まっています。これには業界団体も猛反発しています」(同)

 この取り組みの是非については、財務省側の思惑も、業者側の反発意見も、どちらも一理あるという。

「確かに財源があるなら、それを待遇改善に充当しろという財務省の言っていることもわかります。対して、介護業者の内部留保は、施設が古くなった時の修繕や建て替え費として備えているものだったりするので、それを給与に充てるのは難しいという部分もあります」(同)

 介護業界では新規の人材不足に加え、現在働いている人たちの離職率も高くなってきている。

「介護の仕事をしている人たちも高齢化しており、ホームヘルパーの4人に1人が65歳以上といわれています。この世代になると職業に関わらず、自分の親の介護のために離職するというケースが続出しているので、今後の就業人数の維持も難しくなってくると思います」(同)

 介護業界の構造的かつ慢性的な人手不足に特効薬は無く、一朝一夕に解決する問題ではない。

「介護ロボットの導入というのも進められていますが、職員が高齢化している中で対応できる人材がどれぐらいいるのかという問題もあります。介護業者どうしが合併して大規模化したり、求人や人材育成を複数の事業所が合同で行うなどの体制づくりを行うというのも対策のひとつですが、こうした取り組みが地域による介護資源の偏りを生まないかという課題もあります」(同)

 賃金問題だけでなく、介護業界の構造ごと変えていかないと、遠くない将来に破綻してしまう可能性もあるのだ。

「個人的には、介護業界のイメージアップをすることも大事だと思います。ある高校生が、卒業後の進路に介護業界を希望していたけれども、家族や親戚一同に止められたというケースがありました。現状では、介護は“キツくて稼げない”という印象が強い。賃金を上げるなどの改革と同時に、学生たちに対しても、介護という仕事の社会の中での位置づけを見直してもらい、やりがいのある仕事だと教えていくことが必要だと思います」(同)

 介護は、社会の中で必ず誰かが担わなくてはならないサービス。その価値を改めて考え直し、認知していくことから始めていくべきだろう。

(文=清談社、協力=田中元/介護福祉ジャーナリスト)

田中元/介護福祉ジャーナリスト

田中元/介護福祉ジャーナリスト

介護福祉ジャーナリスト。介護保険スタート前の1997年より高齢者介護分野での取材・執筆活動を手がける。2000年代初頭よりデンマーク、スウェーデン、オーストラリア等の海外の介護現場も取材。介護従事者向けの制度改正や介護事故防止の講演なども行う。

『新しい介護記録の書き方・活かし方』 介護報酬改定でデータベースを活用した介護に対する新たな報酬加算のしくみがスタート。 国の運営するデータベースである『LIFE』への介護現場からのデータ提供の際には、 ルールに則った『介護記録』の書き方が必要になった。 本書は新しいデータベース活用時代(=LIFE時代)に必要な、 介護記録の書き方のポイントについて図解でやさしく解説。 amazon_associate_logo.jpg

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