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松本人志さん代理人弁護士、刑事告発された過去が裁判に影響する可能性を検証

文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
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吉本興業のHPより

 先月発売の「週刊文春」(文藝春秋)によって女性への問題行為が報じられていたタレントの松本人志さん(ダウンタウン)は22日、発行元である文藝春秋に対し、名誉毀損による損害賠償(請求額は約5億5000万円)と謝罪広告の掲載などを求めて東京地裁に提訴した。代理人弁護士は田代政弘氏(八重洲総合法律事務所)だが、ヤメ検弁護士である田代氏は東京地検特捜部に在籍していたときに担当していた小沢一郎衆院議員の資金管理団体をめぐる「陸山会事件」において捜査報告書に虚偽の記載をしたとして、2012年、虚偽有印公文書作成及び行使罪の容疑で刑事告発された過去を持つ。嫌疑不十分で不起訴となり、減給6カ月の懲戒処分を受け検察官を辞職したが、裁判官の心証に与える影響という面で、このような経歴を持つ弁護士に代理人を委任することが裁判で不利に働く可能性はないのか。また、裁判所が判決において、松本さんによる女性への強制的な行為があったのかどうかという事実の有無にまで踏み込んだ判断をする可能性はあるのか。弁護士の見解を交えて追ってみたい。

 騒動のきっかけは、先月27日発売の「文春」記事だった。記事内では松本さんから加害を受けたという女性の証言が紹介されたが、所属する吉本興業は同日、「当該事実は一切なく、タレントの社会的評価を著しく低下させ、名誉を毀損するものです」とするコメントを発表。松本さんも自身のX(旧Twitter)上で、

<いつ辞めても良いと思ってたんやけど…やる気が出てきたなぁ〜>(12月28日)

<事実無根なので闘いまーす。それも含めワイドナショー出まーす>(1月8日)

などと投稿し、報道を否定。松本さんを起用しているテレビ各局はニュース番組で、吉本興業が報道を否定したというかたちで一斉に報じていた。松本さんがレギュラー出演する番組は予定どおり放送され、降板などの動きも見られなかったが、今月4日放送の『ダウンタウンDX』では提供クレジットが表示されず、一部CMがACジャパンのものに差し替わるなど影響も出始めていた。

 5日には「週刊女性PRIME」が、「文春」で松本さんから被害を受けたと証言していた女性が飲み会後に同席者のタレント・小沢一敬さんに送った「今日は幻みたいに稀少な会をありがとうございました。会えて嬉しかったです。松本さんも本当に本当に素敵で、●●さん(編注:「週刊女性」によって伏字)も最後までとても優しくて小沢さんから頂けたご縁に感謝します」と書かれたLINEメッセージを掲載。8日になり所属する吉本興業は、「文春」との裁判に注力することを理由に松本さんが芸能活動を休止すると発表。フジテレビは14日放送の情報番組『ワイドナショー』に松本さんが出演するとコメントしたが、一転して10日には松本さんの出演をとりやめたと発表した。

 この間、「文春」は3号連続で松本さんについて報じているが、週刊誌記者はいう。

「記事の内容は基本的には松本さんとの飲み会に出席したという女性の証言ばかりで、証拠といえるような材料は示されていない。3号にわたって複数の女性の証言が掲載されており、松本さんが不適切な行為を行っていたという印象を強めることにはつながっている一方、信憑性に疑問を持つ向きが多いのも事実。松本さんは完全否定の姿勢を貫いており、裁判でもその姿勢は崩さないだろうから、今後の展開は読めない」

ヤメ検の弁護士

 松本さんサイドは代理人によるコメントとして22日、「今後、裁判において、記事に記載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく、およそ『性加害』に該当するような事実はないということを明確に主張し立証してまいりたいと考えております」との文面を発表したが、そこに代理人として記された弁護士の田代政弘氏の名前が注目されている。

 田代弁護士が所属する八重洲総合法律事務所のHPなどによれば、田代弁護士は1990年に早稲田大学社会科学部を卒業後、95年に司法試験に合格。98年に検察官検事に任官し、前述のとおり2012年に陸山会事件をめぐり刑事告発され(不起訴)、同年に退官。14年に日本弁護士連合会弁護士に登録している。こうした代理人の経歴が、委任者である松本さんの裁判に影響する可能性はあるのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「ヤメ検の弁護士にはいろんな経歴を持つ方がいますが、『捜査報告書に虚偽の記載をしたとして刑事告訴(不起訴)された経歴』は、日常の依頼を受ける際にお客さん側がドン引きする可能性はありますが、裁判所ではその影響は皆無です。しかし、私の18年間の弁護士経験上では、ヤメ検の先生は、捜査時代の根性が染みついているので、あたかも『お前が犯人であることはわかっている』と言わんばかりに、『俺の言っていることは正しい』という態度で裁判に臨む方が多いと感じます。相手方の弁護士にムダに威圧感を示したり、相手方の主張を『そんなわけないでしょ』と頭ごなしに応対したりします。捜査や刑事裁判は、99%、検事の主張が正しい、すなわち『目の前の人間が犯人である』ことになるので、これに慣れていると、民事の裁判でも上記のような態度をとってしまうのでしょう。

 また、ヤメ検の弁護士が受任している事件は“ガチ勝ち筋”の事件ばかりというイメージがあります。私たち純粋な民事の弁護士は、クライアントの法律相談に応じ、クライアントの要望をかなえるべく、法律上、事実上、通りにくい請求や主張をせざるを得ないときもある(勝つ見込みが薄くても、クライアントの要望をかなえるべく訴訟提起する場合もあるということです)のですが、ヤメ検の弁護士は、法律相談の際、勝つ見込みが薄い事件はそもそも受任しない傾向があるということです。悪く言えば、ヤメ検の弁護士の『100%有罪にできる事件だけを扱っていた捜査時代の根性』が、ヤメた後も事件を選んでいるのでしょう(ガチ勝ち筋の事件ばかりを選んでいるのでしょう)。今回の松本さんの民事訴訟ですが、『捜査報告書に虚偽の記載をしたとして刑事告訴(不起訴)された経歴』が判決等に与える影響は皆無です。しかし、ゴリ押しの訴訟活動は裁判官に嫌われるでしょうし、“ガチ勝ち筋”ではないと思われる今回の訴訟について苦労することでしょう」

 気になるのが裁判の行方だ。あくまで「文春」側は、松本さんから加害を受けたと主張する女性の証言を報じており、加害があったとは断定していないので名誉棄損には当たらないと主張するのではないかという解説もみられる。つまり加害が存在したのかどうかは争点にならないとの見方だが、裁判所が判決において加害の有無、さらには松本さんによる強制的な行為の有無にまで踏み込んで判断する可能性はあるのだろうか。

「主張や証拠類を見ているわけではないので、報道の範囲での話ですが、仮に判決になる場合、裁判官が『性行為の有無、および当該行為が強制的であったかどうか』まで判断することはないと思われます。今回、『文春が記事を書くにあたり、性行為や強制があったと信じるに相当な理由があったかどうか』が争点となるため、被害者とされる女性の証言について、いかに信用性があったかどうかを重点的に判断することとなると思われます。性行為や強制があったかどうかではなく、『記者に説明する被害者の証言が極めて具体的であり信用性があったので、文春が記事を書くにあたり、性行為や強制があったと信じるに相当な理由があった』と判断するかどうか、ということです」(山岸弁護士)

レギュラー番組など

 松本さんがレギュラー出演していた番組は、『人志松本の酒のツマミになる話』『まつもtoなかい』(ともにフジテレビ系)、『クレイジージャーニー』『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』『ダウンタウンDX』(ともに日本テレビ系)、『探偵!ナイトスクープ』(テレビ朝日系/ABC制作)の計7本。このほか、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)、『キングオブコント』(TBS系)などの特番に出演するほか、くら寿司のテレビCMにも出演していた。

【松本人志さんの経歴】
1963年9月8日、兵庫・尼崎市生まれ。60歳。82年に浜田雅功とお笑いコンビ・ダウンタウンを結成し、NSC大阪校に入学(1期生)。89年に「第24回 上方漫才大賞」で大賞受賞。94年に著書『遺書』が出版され約250万部発行のベストセラーとなった。2007年には『大日本人』で映画監督デビュー。09年に一般女性と結婚、同年に長女が誕生。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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